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第27話(別視点):なれる可能性

伊原恵美いはらめぐみ Side:


ファッションデザイナーになりたい私は、そのためのお金を稼ぐために海の家でバイトすることにした。夏の海の家はとても忙しくて大変だったけど、オーナーがいろいろ気を使ってくれたのでやりやすかった。


「伊原ちゃん、お疲れ様。なにかトラブルとかはなかった?」

「はい、特にお客さんに絡まれるようなこともなかったです。海の家のバイトということで、そういうこともあるかも?と心配していたんですが」


海の家のバイトだと、ガラのよくないお客さんもくるかもと心配していたんだけど、軽くナンパされることはあったけど、しつこく絡まれるようなことはなかった。


「それなら、あの最上のおかげかもね」

「そうなんですか?」

「あいつ、やばそうな客が来たときには、配膳係を代わっていたんだよ」

「知りませんでした...」

「あいつ自身は何も言ってなかったけど、前日に仕込みを凄いがんばっていたし、去年も問題を起こした客とかが来たときには必ずあいつが対応していたからな」


そんなことがあったなんて知らなかった。せっかく同じバイトなんだし、どんな人なのかもう少し気にかけてみよう。


□▲□


その後のバイトでは最上に少し注目してみたんだけど、ずっとキッチンで一生懸命調理をしていた。そして男数人のグループが入ってくると、たまに配膳係を代わってくれていた。言われてみると配膳係を代わってくれているのは、なんとなく雰囲気が悪そうなグループが来た時のような気もする。それにしても、他のバイトの男の子はオーナーが目を離すと、すぐにサボろうとしているのに、あの最上はそういう手抜きは一切していないみたいだ。料理も手早く済ませていて、混んできてもお客さんにあまり待たせる必要はなく配膳係としてもとてもやりやすかった。


□▲□


ファッションデザイナーになれるのかどうか迷っていた私は、最上に相談してみることにした。


「ただ信じてその道に進んだ人だけが、なれる可能性を残しているというだけで」


友達に相談すると、「大丈夫だよ。なれるよ」みたいに単純に応援してくれる場合がほとんどなんだけど、最上は私の覚悟を試すような応援の仕方だった。なれる可能性を残しているとしか言っていないから、なれるとは言っていない。まるで最上がすでにそういう体験をしてきたかのようにも聞こえる。でも高校二年生で、そんな経験をしているなんてちょっと考えられないし、とても不思議な人だと思う。バイトの最後に連絡先を交換したから、また相談してみよう。

第27話までお読みいただきありがとうございます。よろしければ評価、感想などを頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

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