八話:投票
なんでこうなってしまったんだ。イブは俺を学級委員に推薦した。
もしだ。もしこれで俺が学級委員になったら、俺の平穏生活は確実に崩れ去る。確実に、あの熱血男に勝たなければならない(熱血かはまだわからんが)。
「じゃあ鈴井くん、前へ来てくれるかな?」
俺は半強制的に前へと出される。目の前には熱血男。
そいつは、クリア直前のゲームセーブデータを破壊されたかのような怒りの表情を見せていた。
「人間ごときが……神に逆らうというのか!」
遂にやつの怒りは爆発し、俺の胸ぐらを右手掴み上げた。
「こらこら、メルゼくん、だめだろ?」
島岡先生の言葉も聞かずさらに奴は一歩前へと足を突き出す。怒りでシワはさらに深くなっている。
「俺は!オーディンの末裔だぞ!!」
オーディンだと?確か北欧神話の最高神だよな?神話についてよく知らないが、オーディンに子供や末裔がいたのか?
待てよ、こいつ、他の異形クラスの奴と違って、外見に特殊なものが見られない……。
本当に神の末裔なのか?
だが、それはそれとして、苦しい、さっきからもがいてはいるが、こいつめちゃくちゃ力がつよいぞ、これでも結構鍛えてると思ってたんだが……。
その時だった、やつの左手に何かが現れる。
赤く光る模様の刻まれた槍。まさか!
「貴様も気づいているだろう?そう、これはグングニルだ。今や長い時を経て力はほぼ失ってはいるが、それでも!人間一人程度殺すくらい絶やす……」
「そこまでだ」
島岡先生がメルゼの左手首を掴み上げる。
「君も異形クラスだ。人に手を出せば……わかっているだろ?」
チッ、という舌打ちと共に、奴は俺の胸ぐらを離し、グングニルを戻す。戻すと言うより、その場から消したという表現のほうが正しいだろう。
俺はスーハーと息を吐き、呼吸を整える。
人にでを出せば?島岡先生が何を言っているのかわからないが、人に手を出せば、コイツラは何か不都合があるということだ。
いや、悪用しないよ?悪用したところでじゃん。俺平穏に暮らしたいだけだし……。
ここで俺は疑問に思っていた事を思い切って聞いてみた。
「なんで俺が推薦された時、そこまでキレたんだよ?」
メルゼは俺の方を振り向き、見下すような目で観たあと、冷たく言い放った。
「神に逆らう愚かな人間がいたからだ」
ここでわかったことがある。こいつは自己中だ。
さてここで俺は忘れていたが、あることを思い出した。俺、学級委員推薦されてるじゃん……。
そうだった、こいつと争ったことで何もかわりはしないじゃないか!
「それじゃあ、2人出てきちゃったし……投票しようか」
頼む。誰も、俺を選ばないでくれ……。こうして俺の平穏を掛けた投票が始まった。




