五話:変わるもの変わらないもの
カポッ、そんな軽い音と共に、レヴェラの左手が取れた。
俺はあまりの驚きで腰を抜かしてしまった。取れた手は俺の手を握っている。しかも結構強い力で。
「あ……あぁ……ぇ?」
情けないかすれた声が俺の喉から出る。レヴェラが近づき、左手をとった。
「ちょっと困るよお客さん。私の手取られたら困る困る」
「困るのはこっちだよ、どういうマジックか知らねぇが、さすがにビビるぜ……」
レヴェラはポカーンとした顔で見ている。そのまま俺に顔を近づける。近い近い、これでも思春期男子だぞ!
「もしかして、翼、ここが異形クラスってこと、信じてない?」
耳元で囁くようにレヴェラが喋る。俺はレヴェラを押しのけながら、立ち上がり、後に下がる。これ以上は理性が持たないぞ。
「信じるも何も、俺も人間お前らも全員人間だ、この世界にゾンビだとかそんなものが存在するわけないんだよ、そんなの昔からわかってる。サンタクロースの正体が親なのも、UFOの正体がCGなのも!この世界に、そんな非現実的なことはないんだよ」
俺はまくし立てるように喋る。そうだこの世界に非現実的な生物もものも存在しない、それが普通、それがすべてだ。
空気が静まり帰る。俺は空気に耐えられず少しずつ後ずさりする。だが後から何者かに肩をつかまれる。イブだ。
「あなたが信じないならそれで十分。いつか信じることになる。それが真実だから」
無機質な声、だが確実に感情がこもっているように感じた。
「いつか信じる?ねぇよ、会ったとしても、俺は信じない」
その時だった。チャイムが鳴り響く。全員がざわざわしたして席に着き始める。
俺も自分の席へ戻ろうとするが、レヴェラが俺の肩を掴んできた。
「何だよ」
さっきので気分が悪くなるなった俺は少し圧をかけて行った。
するとレヴェラが手を差し出してくる。
「翼くんは私たちが化け物ってことを信じないんでしょ?なら、人間の友達として!よろしく!」
胸が締め付けられるようだった。親の時と同じだ。オレは結局、いい人間ばっか傷つけちまう。
「さっきはごめんな、なんか」
多分ギネスに載るほどの素早い仲直りだろう……まて?友達って言ってたか?オレの目標、平穏は多分ここで潰えたのだろう。
オレはレヴェラと仲直りし、席に着こうとする。だが椅子が壊れオレは床にケツを打つ。思ったより衝撃が強く、オレはケツの痛みに悶えた。なんでこういう時に限って、不幸体質が発動するんだが。
その日はその後何もなく、下校時間になった。オレはバックを背負い、教室を出る。
そのまま靴を履き、正面玄関から出る。
何だか一日が数十年に感じた。オレは大きなため息を吐く。
「疲れている?」
「うわぁッ!?」
またもや音もなく後に現れたイブにオレは驚き、驚きの声をあげる。周りが一瞬で俺に注目した。オレはイブの手を掴み一気に走り出した。
「なんでこんな事をするの?もしかして好…
「んなわけねぇだろ!!」
オレはイブの言葉を強引に遮り止まる。イブの手は生気を感じず冷たい、冷めた鉄を触っている気分だ。
「オレは平穏に生きたいんだよ。だから、まず……急に後に現れるのはやめてくれ」
オレは息切れで途切れ途切れになりながらもイブに伝える。
「わかった」
その一言だけだった。
「私の家は逆方向だから」
そう言ってイブは普通に歩いて帰る。わけもなく。なんと足を変形させて飛び去った。
あんぐりと開いた口がふさがらないふさがらなかった。飛んだ?足変形してたよな。やっぱり疲れているのかもしれない……。今日は早く寝よう。
オレは息を整え、帰路についた。




