二話:俺は異常お前は普通
目の前にいるこの女。イブとかいったこいつは、どうやら重度の妄想癖か厨二病を患っているのだろう。自分が人工知能AIだと?ふざけたことを言うな、俺の目の前にいるのはどう見ても人間の女性だ。
奴はポカンとしている俺に説明を続ける。
「私は15年前、霧山博士によって発明されました。この世界で暮らし、普通の高校生として自分の素性を隠して生きてきた。私の目的は感情の入手、そのためにここにきたのです」
べらべらとお前は何を言ってるんだ。本当に頭がおかしいのか、それか俺が夢でも見てるのか?目的のためにここにきた?だとしたらこの高校に何がある。ごく普通の高校だ。
「あんたのことはよく知らないが、そういうのはできるだけ控えたほうがいい」
助言は大切だ。こんなに可哀想な人でも少しくらい自分がヤバイ奴だってことは理解してくれるだろう。
彼女は目を少し見開いたまま席に座り、前を向いた。俺はそれを確認し、また分厚いSF本の世界に浸る、はずだったのだが、こいつと話すときにページを閉じたらしい。おかげで続きがわからん。
少し時間が経ち。やっと担任が入ってきた。少し小太りのジャージ、少し生えたひげ、見た目で言えば四十代後半くらいの先生が入ってきた。
その先生は明るい口調で自己紹介をする。
「私はここの担任になった。島岡善次と言います。よろしくみんな」
ニッコリと輝く太陽のような笑顔が島岡から放たれる。
島岡が教卓に勢いよく手をつく。そして一言、言ったのだ。
「それじゃあ次はみんなが自己紹介しよう」
と、ふざけるな。俺の隣のやつが俺の時と同じような自己紹介をしたらどうする。こいつが俺の時と同じような自己紹介をしたら、確実にこいつは笑いもの。そしてその隣にいる俺にも被害がでる(多分)。気がきじゃねぇ。
早速一人目が立ち上がる。いかにもやんちゃで元気いっぱいな女の子だ。頭には猫耳が生えている。
……?猫耳?いや、待て待て。ありえないだろ。人の頭に猫耳?カチューシャつけてきてるのか?それにしてはよく動くし。まさか本物なのか?
多分俺の見間違いだろう。そう信じよう。その女の子は元気いっぱいの声で自己紹介する。
「私の名前は猫井光!よろしくお願いします。見ての通り!猫の獣人です」
なんてこった。どうやらこのクラスには、厨二病。しかも一人は高校にカチューシャつけてくる馬鹿が二人もいるらしい。
さて、俺はさっきまで読んでいたページを見つけ読み始めようとするが、あることに気づく。
さっきから自己紹介してるクラスメイト達。そいつらは、全員、自分を何々の獣人だとか、鬼だとか、シェイプシフターだとか、あげくの果てにはゾンビだなんて言ってやがる。
俺のクラスの奴らは全員頭がおかしいのか。いやもしかしたら俺がおかしいのか?そう錯覚するほど全員がおかしい自己紹介をしている。そして遂に俺の番がきた。
俺は席を立ち。大きく鳴り響く心音を沈ませ。息を吸い。
「鈴井翼、人間です」
そう言った。全員が振り向く、オレの方へと、その沢山の視線が怖い。俺はどうやら、全員が厨二病のおかしなクラスに入れられてしまったらしい。




