二十一話:なぜ持ってる
これは大変なことになった。オレの目の前にはイブと見つけた謎の写真。しかもパソコンとかのデータではなく、写真本体。
なぜここにある。頭に思考を巡らせる。目の前にあるこの写真、まさかもともとは異形管理局ってところのものなのかもしれない。でも、だとしたら、なぜイブの記憶フォルダにこの写真が存在する。
脳の理解が目の前の状況に追いつかない、その時だった。メイリィがこちらを睨んでいる。まるで獲物を狙う百獣の王がごとく鋭い目突きがオレを突き刺していた。
「さっさと吐け、知ってるのか知らないのか」
勝久がオレの答えをせかした。心臓の鼓動は上がり、背筋が冷める感覚。オレは必死に答えを探す。
間違えたら、この隣にいるメイリィならオレを殺しかねない。答えを、最適解を……。
オレは覚悟を決め、声を振り絞った。
「知らない……」
たった、たったその一言だけが管理局の室内へ響いた。小さくともその声は確実に耳に届いている。
「知らないか……じゃ問題ない、帰れ」
「え?」
声が裏返った。情けない声が喉を通って外へ出ていた。
「いや、この写真について聞きたいだけだしな、何も知らないなら帰ってもいいぞ」
それだけかよ、ふざけんな。こっちは殺されるかもしれないとドキドキしてたんだぞ。もし俺にメルゼのような神様パワーがあったら月に代わってお仕置きしてるぜ。
「あっそうだ」
その言葉で室内の雰囲気が変わった。温度が一気に下がったようなそんな気がしたんだ。振り返ると、勝久はまだ見せたことのないほどに深刻な顔をして席を立っていた俺をみている。
「お前、犬神って言葉に聞き覚えはないか?」
犬神?何だそれ、今まで生きてきて一度も聞いたことないぞ、そんな言葉。
「犬神、いや、全く……」
俺がそう答えるとやつは席を立ち、俺に何かを渡した。古いケータイだろうが、無線機のようにも見えるが……オレはこういうのには全く詳しくないから見ても分からなかった。
「もし、犬神と名乗る奴にあったら、すぐにそれを鳴らせ」
犬神ってのは何か危険なものなのか?少し気になるな、オレは勝久へ犬神が何なのか聞いてみることにした。
「な、なぁ、聞くのは変かもしれないが……犬神って何なんだ?そんなにヤバいものなのか?」
勝久は俺を少し見つめたあと、ポケットから煙草を取り出し、吸いながら答える
「犬神ってのはな、約20万年も前、この地球に現れたとされる異形の原初たる存在だ。姿は昔の壁画らしきものにしか記されておらず、全身白の死装束らしき着物を身にまとい、背には三本の尻尾が生えた生物だ。と言ってもこの先を説明すると長くなる。また今度機会があったら話してやる。今日は帰れ、メイリィ、そいつを乗せてやれ」
「は?なんで私が……チッ」
メイリィが小さく舌打ちすると、俺の手を掴んで引きずった。
「じゃあな鈴井翼、また会おうぜ、まぁ……絶対会うことになるだろうがな」
帰りはメイリィが運転した。だがその運転は荒っぽく、いつ事故を起こすか気が気じゃなかった。三分もしないうちに、オレは家の前についていた。
「おい、鈴井翼」
俺が車から降りる時にメイリィに止められた。
「お前、さっきの尋問嘘ついたろ」
その言葉にオレはその場で固まるのだった。




