十九話:仕事
やつはオレの頭にリボルバーを突き立てた。冷たい鉄の感触が額の肌に伝わる。
心臓の鼓動は上がり、心は恐怖にとらわれる。ついて行かなければ殺す、だと。何言ってんだこいつは、だがやつの目はオレの心を見透かすように見つめている。
まて、親に相談しておいて、ついてこなければ殺すだと。おかしくないか?オレの親が子供を殺すことを許可しただと?
オレは賭けにでた。勇気を必死に振り絞り、銃口を震える手で掴み、ゆっくり下に下げる。男は予想外だったのか、目を見開いている。
「脅し、だろ?話を聞くための人間を簡単に殺せるわけがない……」
口はガタガタと震え、とても情けなかったと思う。そりゃあ頭に銃突き立てられてんだ。誰でもこうなる。
「驚いたな。まさかここまで勇気があるとは……。だがガキ。命は大切にしておけ。オレじゃなかったらすぐに頭を撃ち抜かれていたぞ」
それは流石に冗談であって欲しいぞ。
やつが喋り終わると同時にタクシーが目の前に止まる。普通のタクシーとは近い、車全体が黒く塗りつぶされている。
「乗れ」
オレはやつに言われるがままにタクシーの中に入り、座った。隣にやつも座る。
タクシーの運転手は行き先も聞かずに走り出す。
「管理局に行く前に、お前に伝えて置かなくちゃな。なんでお前が異形クラスに入れられたのかについて」
声がでない。わからないがとてつもない圧をかけられているような気分だ。
オレの返事を聞かずに橘は喋り始める。
「お前が異形クラスに入れられた理由だがな。それはお前の親の提案だった。オレはここらへんの地区を担当しててな。オレにお前の親が懇願してきたわけだ。息子は今人と十分暮らせるほどの心の余裕がない。だから、どうか息子を異形クラスに入れてくれ……。ってね」
オレは拳を握り締めていた。また、オレは気づかぬところで親に迷惑をかけていたなんて。自分の弱さに腸が煮えくり返そうだった。だが勝久はそんなオレの言葉も聞かずに続ける。
「だがオレにはそんなことできるほどの力はない。だから上のやつらに言ってみたらあっさりOK出してよ。お前は普通じゃない異形のクラスに入れられたってわけだ」
話を聞き終え、俺がなぜこんなクラスに入れられたのか、この世界には色々異形が存在することが理解できた。異形なんているはずがない、そう思い込んでいた……いや、現実から逃げていたオレの心は遂に追い詰められ、この世界に異形が存在することを信じるしかなくなったのだ。
「なぁ、ところであんたは、異形管理局で何してるんだ?地区の担当とか言ってたけど……」
すると男は窓の方を向き、外を眺めて一言言った。
「政府や人に逆らった異形を殺す仕事だ」
オレの脳裏に一瞬嫌な思考が流れる。まさか、今日イブが学校にこなかった理由は……。
その時だった。車のブレーキ音と共に、車が止まった。
「着いたぞ。ここが、異形管理局本部だ」




