十三話:嘘か本当か
チッ、チッ、チッ、時計の針が動く音のみが聞こえる。
俺はもう一度写真を眺めていた。写真に写っているのは、確実に俺だ。昔の俺とまるで同じ、だが俺にはこの少女、仮にイブとしよう。イブと一緒に遊んだり、写真を撮った記憶なんて存在しない……。
頭のなかで思考を巡らせる。これは本当に俺なのか、なぜ思い出せないのか、わからない。なぜだ……。
俺の額から汗が垂れる。体はなぜか緊張しているようだ。
「思い出せない……そう思っているでしょう」
驚いた。こいつは人が集中しているときに急にしゃべりだすな。それにしてもこいつには心を読む機能もついているのか?
「あ、あぁ……なぁ、まずこれは本当に俺なのか?」
「知らない。私にも、この写真の記憶はない」
イブにも記憶がない……か。それもそうだ、こいつは今まで記憶がなくて昨日やっと記憶ファイルから削除されたものを復元したんだ。そりゃ記憶がある方がおかしいか。
開いた窓から夕日が差し込む。真っ赤な夕日は少しずつ、色を失い、闇に飲まれていく。
俺は時計に目をやる。すでに19:00を回っていた。まじかよ、もうそんなに時間が経ったのか?
俺は急いで立ち上がる。
「イブ…この写真のことについては明日学校で話そう……。それと、この写真のことは誰にも言うな、何かあったら困る」
イブは小さくコクっと頷く。俺はそれを確認し、イブの家から勢いよく飛び出しながらもちゃんと失礼しました。と挨拶をして帰った。
家に帰ると案の定親にブチギレられた。まさか何も伝えずに息子が19:00くらいまで帰って来ないなんて、怒るに決まってる。
俺はきっちりしごかれた後、自分の部屋に入った。なぜかまた窓は開いている。
「母さんかな…窓開けてるの……」
俺は窓を閉めた後、ベットに倒れ込む。そして今日起こったことを深く考えてみた。
俺とイブは、昔に会ったことがあるのか?でも俺の記憶はちゃんとしてる。まだ友達がいたから一緒に遊んでいた。
そこに女の友達なんていなかった。ありえない、ありえないんだよ。だけど、俺今化け物たちと暮らしてる。
神だったり、ゾンビだったり、AIだったり。いまだに完全には信じきれないが、アイツラは確かに人間じゃない。
そうだ。この2日間、非日常的なことしか起きてないじゃないか。こんなこともあるのかもしれない。
「お〜い翼、お前最近学校はどうなんだよ」
親父がしまったドアを挟んで俺に喋りかける。
「普通だよ。今のところは何もないね」
親には心配させるわけにはいかないしな、これは俺だけで解決しなくちゃいけない……。
「そうか……」
どこか寂しげのある声のあと、ドアの前から立ち去ろうとする足音が聞こえた。
「親父」
なぜか俺は親父を引き止めていた。
「ありがとうな……」
口から無意識にその言葉が出ていた。親父は何も言わずに、俺の部屋の前から立ち去った。
俺は今日の事を色々考えながら、いつの間にか深い眠りに落ちていた。




