十二話:私とあなたと昔の記憶
「私の家に来てほしい」
たったそれだけの言葉で、俺の思考は停止した。何を言ってるんだこいつは……。家に来てほしい?
「ど、どうしたよ……急に」
「あなたに見せなければならないものがある」
見せないといけないものだと?俺とお前にはまだ2日の関係しかないのに、見せないといけないもの?
「とにかく私の家に来てほしい」
奴は俺の前まで近づく、やめろ、俺の理性が壊れるわ。
俺はイブを少し下がらせて、イブの家に行くと言う事を告げた。
40分ほどたっただろうか、山をくだりきり、商店街を抜け、さらに駅を通り過ぎ、アパートについた。
薄いピンクの壁、まだ新しいのかアパートはすごく綺麗だ。
2階建てで横には六部屋ほどがある。ドアとドアの幅から見るに、一つの部屋は思ったより広いんだろう。
俺はイブが行くままに2階に登り、7号室についた。
2階の一番左側、そこがイブの部屋らしい。
イブがドアを空けた。部屋の中は綺麗に片付いており、生活に必要最低限と思われるものしかない。
娯楽のものなんて1つも見当たらないぞ。
イブが部屋の真ん中にある低い丸テーブルに俺を座らせ、キッチンのほうへ行く。
部屋の中をみてみることにした。暇だしな。
本当に娯楽の物は見当たらない。クローゼットが付いているが多分中身は服だろう。
丸テーブルから丸見えのキッチンでイブはコップに何かをついでいた。
少ししてイブは俺の正面側に座る。丸テーブルを挟み見つめ合うように。
イブが自分の前に2つコップを置く、少し手を伸ばして俺のほうに1つコップを取り置く。
中にあったのはあったかい緑茶だった。一口啜ってみた。
畜生罠だ。思ったよりも熱い、舌が火傷するかと思ったぞ。俺は目からでそうな涙を必死にこらえ、イブの方を向く。
イブはコップの中の緑茶を一気飲み。そのままダァンッと言う音と共にコップをテーブルに置く。
「熱くないのか?」
「熱い」
「お前バカなのか?」
沈黙、何も喋らない。
すると突然立ち上がった。そのままクローゼットを開け何かを取り出す。取り出したものはノートパソコンだった。
まさかこいつも娯楽の道具を持ち合わせているとは予想外だった。
イブはPCをカタカタと鳴らし操作し始めた。三十秒ほどたち、イブは俺に画像を見せた。
そこには幼稚園時代の俺と、イブによく似た少女。その顔は無表情だった、手には1輪の花を持っている。
俺と少女以外には誰もおらず。笑顔の俺と、無表情の少女だけが写っていた。
「昨日、私の記憶装置を解析してみた。そのなかで1つ。とあるファイルだけが消されている跡があった。これは私が昨日、ファイルを復元させた時にあった画像。それ以外にも沢山ある。」
「この写真が何だよ?」
なんでこいつが俺の写真を持ってる。いやもしかしたら俺に似てるだけかも知れんが……。
「私は昨日、あなたに聞いた。昔出会ったことがあるかと……」
そしてイブの口からは信じられないような衝撃的な言葉が発せられた。
「私とあなたは昔に出会ったことがある」
チッ、チッ、と言う時計の針の音だけが部屋に響いていた。




