十一話:私の家に来て
メルゼは俺を見つめていた。いや、見下していると言う方が正しいのだろう。
「俺は家臣になってもいいと言ったのだぞ?俺の家臣になれるのだぞ?俺は神だぞ?」
奴は断られるのが予想外だったらしい、目を丸くして俺に顔を近づけながら言葉を連ねる。
「そんな事を言われようが、俺はお前の家臣になるつもりはない」
たったそれだけ、俺はメルゼ提案をきっぱり断った。さすがにメルゼも根負けしたらしい、少し考えるような表情をしたあと、
「ならば仕方あるまい、貴様のような無能より他の優秀なものを家臣に加えよう」
そう言って俺の前から去っていった。
お前さっきまで認めようとか言ってたくせに、お前の感情はくだり坂の自転車かよ。
俺も立ち上がり、服についた土埃を払っていざ帰ろうと言う時だった。
誰かに服を掴まれた。
俺の服を掴んだのはさっきいじめられていた男だった。肩まで伸びた髪と整った顔で一瞬女と見間違えそうになった。
「あの……だすげで、ぐれて、ありがどうございまず。僕、木下勇気っていいまず」
大丈夫かよ。大粒の涙と鼻水を流しながら勇気は俺に感謝した。
「俺に感謝しないでくれ、助けたのは俺じゃないんだよ……」
奴は俺の肩を掴んでまたズビズビになりながら喋る。
「いや、僕が感謝したいのは、あなたなんです。あなたが僕に背を向けて守ってくれた時、まだ、こんな優しい人がいるんだって……」
やめろ、優しいなんて言うな。俺は優しくない、逃げ続けてきたんだ。
俺は勇気を少し押して遠ざける。
「今度はイジメられるなよ……俺は帰るから」
勇気は首を上下にブンブンとヘドバンかと思うほどに揺らした。
なんで、助けたんだよ俺……。
そんな事を思いながら、学校の正門をくぐろうとした時だった。
「学校終了から約1時間経過」
俺の前にイブが現れた。お前今どこから現れた?無から現れた気がしたんだが?瞬間移動か?
「お前瞬間移動でも使えるのか?」
「使えない、私がやっているのは空間圧縮。私の行く空間を一次的に圧縮して一瞬で移動する。あなた達の分かりやすいような簡単な言葉で言えば超高速移動」
イブは俺が聞いたことに詳しく説明してくれた。待てよ?なんでこいつに超高速移動なんて機能が付いているんだ?まぁ今はいいか……。
「何のようだよ、1時間も待つなんて、相当なようなんだろ?」
俺がイブに聞く。
「私の家に来てほしい」
たったその一言だった。俺の思考が止まるには十分の一言だった。




