十話:神様のお仕事
なんてこった。目が覚めると、教室には夕日がさしかかっていた。
淡いオレンジ色の光が目にあたり、目が覚めたばかりの俺には眩しすぎるので、俺は目を閉じ、擦った。
光に少しずつ慣れていき、ちゃんと目が空けられるようになったので時計をみてみた。
17時23分、時計はその数字を指していた。
寝ぼけながらもゆっくり立ち上がり、教室を見渡す。もちろん誰もいるわけがなく、オレはあくびをかましながらバックを背負って帰ろうとした。
その時だった。
「すみません許してください、これ以上は」
そんな弱々しい声が聞こえてきた。
オレの気分が一瞬で落ちる。昔を思い出してしまった。
人の肌が殴られる、鈍く、生々しい音が響く。それと同時に男のすすり泣くような声も聞こえる。
オレは窓のほうから下をみてみる。
そこには泣きながら男二人に蹴られる色白の男がいた。
「おい、お前異形クラスだろ?気持ち悪いんだよ!異形が人間と同じ空間にいるだけでイライラするぜ!!」
片方の男が蹴りを入れる。いじめられている色白の男はそのケリをもろに受け、地面にうずくまる。
「痛い、助けて……」
涙と嗚咽が混じりぐちゃぐちゃな声で男は叫ぶ。オレはバックを持って階段を降り始めた。
見なかったことにしよう、あー言うのは見なかったことにするのが一番だ。
そうだ、オレは平穏を求めてるんだ。見なかったことにしよう、見なかったことに……見なかったことに……。それでいいのか?
オレがそう思ったその時には、オレはいじめている男の肩をつかんでいた。肩をつかまれていない左の男がこっちを向く。
何だお前。とでも言いたげな顔で俺を見ている。
すると俺が肩をつかんでいた男が振り向き、俺の腹にパンチを食らわせた。
オレはあまりのいたさによろけ、後に半歩下がる。
「おい何だよ、お前?俺の邪魔するの?死にてぇの?あ!?」
男の蹴りが俺の腹に当たる。さっき殴られた場所と同じ……。こいつ、慣れてるのか……。オレは地面にうずくまる。
「気持ち悪りぃ、そこで見てろよ」
オレは必死で立ち上がり、急いで色白の男に背を向け立ちはだかる。
「何だお前!死にてぇみたいだな!ならお望み通り殺してやるよ!!」
男の拳が跳んでくる。あぁそういえば、中学の時にいじめられたのも、庇ったかからだっけか……。なんで俺はこういう時に限って、無駄な正義感を働かせちまうんだか。
男の拳が当たる直前だった。誰かがその男の拳をつかんでいた。
赤く逆立つ髪、鋭い目、真ん中のボタンを全て空けた格好。
「よくやった人間!命をかけて異形を守るその姿大義であった!!あとは俺に任せるがいい、神は人を助けるものよ!」
そこにいたのは俺達のクラスの学級委員長。メルゼだ。
「お前!人間に手は出せないんじゃ…」
するとメルゼはスラスラと語り始める。
「異能憲法第17条、仲間が深刻な被害を受けた場合、加害者への武力行使を許可する」
その瞬間だった。メルゼの拳が男のアゴを殴る。綺麗なアッパー。す、すげぇ、人が、軽々と宙へ吹き飛んだ。
男は地面に落ち、気絶した。
「おい、そこのやつを連れてさっさと帰れ、それとも神の罰を受けたいか?」
ヒィィ!!、という情けない声を響かせ、もう一人の男は、メルゼに殴り飛ばされた男を担ぎ、急ぎ逃げていった。
「よくやった人間…貴様は異形を守った。認めてやろう………俺の家臣として」
「ならねぇよ」




