第3話‐①【結菜side】疑わしい凪くんにフタをしてしまう
【結菜視点】
あの日の夜、遥希くんのうちのベランダで聞いた声。
あれ以来、わたしは優芽ちゃんと凪くんの関係を疑ってる。
4人でピザパーティーしたあとの夜。
遥希くんのベッドルームに、優芽ちゃんと2人で寝てたはずなのに、気づくと優芽ちゃんがいなくて。
リビングにいくと、ソファーで寝てるはずの凪くんもいなかった。
遥希くんだけ、そこに寝てた……。
風に揺れるカーテン。
ベランダの窓が開いていた。
そこから漏れ聞こえた「声」。
それは、そういう「声」だったと思った。
現場を押さえたい衝動と、見てしまったあとの衝撃を考えて、わたしは後者を選んだ。
確認するのが怖くて、そのままベッドルームに戻ったわたしは、翌朝も知らないふりをしてた。
優芽ちゃんも凪くんも、そして遥希くんも――「普通」…だった。
「夢だったのかも?」
何度もそう思ってた。
でもね、最近になって、凪くんがインスタの通知を気にしてるのは気づいてた。
それまでインスタなんか、やってなかったよね?
いま、通知音さえサイレントにしてるみたいだし、わたしといるときスマホは鳴らない。
以前、元カレみーくん(拓海さん)の浮気が発覚したとき、わたしはみーくんのことをめちゃくちゃ責めた。
そしてついに
「そんなに浮気ばっかりするならもう限界! 別れる!」
って言ったんだ。
みーくんの答えは「わかった」だった。
わたしは、そんなふうに凪くんからも言われてしまうんじゃないかと思うと、追求するのが怖かった。
物心ついたときから、うちには父しかいなくて、その父も二年前に亡くなった。
だからわたしには、頼れる身内がいない。
帰れる実家もないから、凪くんだけが、わたしの居場所なの。
失いたくなかった。
疑惑だけで騒ぎ立てることは、あまりにも浅はかかな? と思うから。
こんなとき、以前だったら、悠真くんに相談してた。
悠真くんは凪くんや遥希くんより年上だし、頼れる男性だったけど、それもいまはできない。
悠真くんにはもう、守るべき彼女、美咲さんがいる。
邪魔できないんだよね。
だからといって、遥希くんに相談するのも無理。
自分でなんとかしたい。
わかってることは、わたしがどうしたいのかだけ。
凪くんと、別れたくない。
このまま、優芽ちゃんのことをスルーしていればたぶん、何事も起こらない。
凪くんは、めんどくさい女の子が嫌いだと思う。
裏で何してようが、知らなきゃいいんだよ。
わたしが見てる凪くん。
それだけを「真実」とするならわたしはとても幸せなんだ。




