第15話【凪side】天使をやめた俺と結菜との約束
「すっごいお別れみたいだけど、徒歩5分だからね」
結菜の引越し先は、うちから徒歩5分。
11階建てマンションの8階に決まった。
「凪くん、泊まりにきてね」
「週末とかお互いの部屋に泊まり合いすんのもいいかもな」
さみしいような気がしてたけど、もしかしたら楽しくなりそう?
お金使わず行き来できるし、その意味でもいったん今までの生活をリセット。し、お互いの貯金が貯まったとき、また一緒に住む部屋探せばいっかってことになったんだ。
まだ、冷蔵庫と洗濯機は届いてない。
「また、水色界隈にするんだ」
前に住んでた結菜の部屋もそうだった。
水色で海や空みたいなきれいな空間。
「いいね、水色。結菜の自由に楽しめばいいよ。うちじゃ好きにできなかったもんな」
結菜はうちでは居候だったから、そういう自由にできない不満があったと話してくれた。
俺としてはそんな遠慮せずに好きにしてもいいと思ってたけど、どういう簡単な問題ではなかったようだ。
引越しも終わり、夏の花火があがっていた。
結菜の部屋の窓からも花火が見えるってわかって、ふたりベランダに出てる。
「今頃、遥希たちも見てるかな?」
「見てるでしょ、あの! ベランダで」
「あの、って、まだ気にしてんの?」
「ああ、つい強調してしまったー」
結菜は笑っているけど、まだ気にしてるんだな。
「なんもないって何回言ったら信じるんだよ」
「疑われることやるほうが悪いんでしょ?」
「ま、いっか、一生責められる覚悟でいよっかな」
「えーそれって、一生そばにいるって言ってる?」
「まあな、離れる気ねーし」
焦らないし、結婚だって子どもだって、なにもまだ考えられないけど、将来の約束もないのに、こうして一緒にいられるのは、案外、強み?
「ああ、そう言えば拓海、彼女できたってよ」
「へー今度は何日持つかな?」
「あいつもちょっとは変わっただろ? 俺のおかげで話が少し面白くなってんじゃん?」
花火の音がだんだん大きくなってきた。もうすぐクライマックスだ。
もうすぐ、夏が終わる。
だけど、俺たちはまだ終わらない。
秋も冬も春も、そしてまた来年の夏もそこからずっと
「また来年も花火みようね」
「来年、どこに住んでるかなぁ?」
「一緒に住んでるかな?」
まだそのときは想像できなかった。
「でも、ずっと一緒にいようね」
結菜が手を、そっと握ってくれた。




