第12話【凪side】結菜の引越しと悠真さんの結婚とイベントだらけ
「へーそうなんだー」
棒読み。
遥希から、悠真さんたちが結婚するって話を聞いたけど
「で?」
って思った。
だってさ、こっちは同棲解消で、結菜の引越しが決まったばっかり。
人の幸せが喜べなかった。
悲しいとかつらいとかじゃなく、無感情。
ちょっと前だったら、
「えーいいな! 俺たちも早くやろ!」
「いや、お前はまだだめだろ、貯金しろよ」
みたいな会話があったかも。
わかってんだよ、現実的にまだ無理なのは。
そうゆう精神状態のときに、結婚するって言われても「あ、そう」ってテンションでしか受け止めきれねーっての。
でもな、そもそも悠真さんと俺とじゃ年齢違いすぎるし、結菜だってまだ若いし、比べるもんじゃねーってこと。
俺たちなりのペースでいいし、まだ遊べるんだから。
「おい、凪、大丈夫か?」
悠真さんから肩をたたかれた。
あー仕事中だった、ぼーっとしてるから怒られる?
「元気ないな、遥希も心配してたぞ」
ふたりとも、俺が何かやらかしても心配、なにもなくても心配なんだな。
「結菜ちゃん、部屋借りたんだってな? それで寂しいのか?」
なんで悠真さんが知ってるんだよ、俺言ってないのに。
「それ、誰から聞いたの?」
「ああ、結菜ちゃんから聞いた」
拓海の事情聴取のとき、悠真さんにお世話になったしとか、そんな理由で知らせたみたいだったけど、そもそもそれが根本の原因じゃん?
大げさにするから、拓海だっていい迷惑だったし、それなのにいいことしてやったんだぜって風なのが気に入らない。
「あーちょっと頭痛いんで寝てくる」
休養室ってところにベッドもあるし、適当に休める。
「あーなんかめんどくさ」
ベッドは快適とはいいがたいけど、まあまあ眠れる。
しばらくぼーっとしてたら、
「先輩、大丈夫ですか?」
って、春に入社してきた後輩のゆづきちゃんが顔をのぞかせる。
初めての後輩!
「大丈夫じゃねーんだよな」
って言って、ゆづきに手招きしてみる。
「看病して」
「え、なにすればいいですか?」
ゆづきが目をくるくるさせて戸惑ってる。
「手でも握ってくれたら」
あー病気が再発しちゃったかも。
「あの、それはだめです、できません」
「や、冗談だから」
はい!
とか言って握ってこられたらそれはそれで困っただろうし、良かったな。
「あの、彼女さんとなんかあったんですか?」
「えーなんで知ってんの?」
「あ、遥希先輩から聞きました…というか、聞こえました」
悠真さんと話してるの、聞こえたんだなってわかる。
あいつら、会社でそんな話すんなよ。
「わたし、あの、LINE…」
「LINE、ああそっか、消しちゃったもんな」
結菜の手前、全部消したんだけど、結菜だって悠真さんにLINEしてんじゃんか、俺だけ消すのってなんか不公平だよな。
俺ってきっと、不治の病なんだよ。
別に好きってわけじゃなくても、誘えるし遊べるし、なんならつきあえる。
だけど、好きでつきあうのと、やっぱ気持ちが違うのはわかった。
結菜のおかげ。
そうなんだよな、結菜のおかげで変われそうなのに、うっかりまたLINE交換しよって言いそうになってた。
うちに遊び来れば? ってのもきっとセット。
この、ゆづきって子のこと、悲しませるのは良くないか。
「ごめんね、LINEできないんだ」
「そうなんですね、すみませんわたし、図々しくって」
「いや、そんなことないんだけどさ」
そして、
「もう大丈夫だから、起きるし、仕事戻ろ」
前だったら、ゆづきの手を引っ張って、ここで悪いこと始めてたかも。
それを思えば、なんて成長したんだって思うだろ?
結菜を泣かせたくない。
その気持ちが、俺を止めてくれた。
踏みとどまれるようになったんだ。




