第10話‐②
【10年前の回想シーン、優芽、閲覧注意】
※性的暴力、児童虐待の描写がありますので苦手な方は注意してください。
湊と遥希、3人組のひとり、樹が母の再婚相手の息子?
それを聞いたとき、優芽はかなり驚いた。
母とわたし2人生活が一変、いきなり男2人との同居。
中二の秋、多感な時期に再婚だなんて、しかも授かり再婚ときれいな言い方してるけど、
「なんで再婚なんかすんのかな、すっげー迷惑」
樹が心から迷惑、嫌そうに言った。
「なんで子どもまで作ってんだよ、なあ」
「なんでって、やったからできたんだよ」
わたしはあからさまに言ってしまった。
「やったって、なにを?」
「そんなの、えっちなことに決まってる」
「えっちなことって、どうすんの?」
優芽は知ってるの? と顔をまじまじと見られた。
「それは…」
その瞬間に、樹の中の何かが外れた。
急に目の前の義兄が、知らない男の顔をして襲い掛かってきた。
「やだ、お兄ちゃんなにす…」
「ちょっとだけ、な? じっとしてたらすぐ終わるし」
「やだやだやだ! たすけてはるくん!」
そのとき、とっさにはるくんに助けを求めた。
「なんだよ遥希なんか! 呼んだって来ねーよ!」
でも、はるくんは来てくれたんだ。
少し、遅かったけれど。
「おま…なにした? おい樹! いったい何?」
「見ればわかるだろ?」
はるくんは、樹にこう言った。
「ゴミ箱にかえれ、クズ」
あんなに怒ったはるくんを、わたしは知らない。
それからも樹には「やれ」って言われてやった悪いこと、たくさんあった。
産まれて来た妹の世話するのは大変だったけど、憎いとか、殺したいとか、そこまで思ってた訳じゃなかった。
なのに、樹が
「うぜーなこいつ、捨てちゃおうぜ」
とか言ったんだよ。
まだ泣くしかできない赤ちゃんで、なにもわかんないのに。
わたし、樹に言われるままに妹のこと……。
あの子の泣き声、ガムテープの音でかき消したあの日の夜。
湯船の底の、水の感触。
10年たった今でも、わたしの指先にこびりついて取れない。
そしてね、そうしたのは全部、わたしの意思でやったんだって、樹に言われた。
あれさ、脅迫だよね?
バラされたくなかったら、言うこと聞けって言われて、辛かったんだよ?
でも、実際やったのは、事実。事実だから、逆らえなかった。
それから、それから、まだある。
まだあるけど、もう思い出したくない。
せめてもの救いは、いま妹は、何も知らずに元気で生きてることだ。
あのとき、家を出てよかった。
この場所があって、おじいちゃんとおばあちゃんが、迎え入れてくれて、本当に救われた。
だから、ふたりには感謝しかないの。
お母さんはもう、お父さんとは「姻族関係終了届」とかいうのを出してて、この家ともおじいちゃんおばあちゃんとも縁が切れてるからね。
何も口出しできない。
むしろそれが良かった。
わたしにとってここは、安全な居場所だ。
だけど過去の罪は、消えない。
ただ、はるくんがそばにいてくれるなら、もうあんなことはしないと思う。
とはいえすごく不安はまだあって、あの、「泣き声」がフラッシュバックを引き起こさないのか?
すべて言わなくても
「育児は不安だよ」
ということだけは、はるくんに伝えたいなと思っている。




