第9話‐②
【結菜視点】
「不動産屋さん行ってくるね」
わたしは早速、以前、凪くんと一緒に部屋探ししてた不動産屋さんに、ひとりで行った。
そのときと同じ担当さんがカウンター越しに言った。
「あれ、彼氏さんとは……」
別れたのかって思われたみたい。
そうだよね、2LDKの部屋探しを凪くんとしてたのに、急にひとりでワンルーム探してるんだから。
そう思われるのもしょうがない。
「別れたばかりの一人暮らし女性は、気をつけたほうがいいですよ」
と、同年代くらいの男性担当さんから言われてしまう。
なんでも、担当さんの先輩がそういうお客さんとつきあって結婚したという話もあるそう。
「え〜そんな出会いもあるんですね」
それなら、気をつけるというより、ラッキーでしたねって思うよ?
「そう。ですのでご希望であれば女性スタッフと変えることもできますが」
なんて言われるけれど、わたしはまだ凪くんと別れたわけじゃないし、この人とどうにかなりたいなんて、全然思わなーい!
大体、凪くん見たでしょ? 勝てると思ってんの?
あ、顔以外はこの人のほうが勝ってるのかな?
でも、後から後悔することになるの、このときわたしは気づいてなかった。
さっさと物件決めて契約すれば良かったのに、わたしすっごく迷ってしまって、担当さんのこと、あちこち連れ回した。
お昼どきに重なることがあって、一緒にランチ食べたり……デートしてるみたいになったこともあって、先輩さんがお客さんとつきあったってゆう話も、ありなのかもって感じた。
聞けばなんでも笑顔で答えてくれるし、なにかと親身になってくれるし、心地よい気分になってたのもあった。
不動産屋さんにひとりで来たのは初めてで、前のときはみーくんが一緒にいた。
凪くん、連れて来れば良かった?
一緒に来てって、頼まなきゃと思ってた。
不動産屋さんに通ったのは、土日合わせて4回目だけど、もうだいたい目星ついたから、あとは決定するだけ。
それにしても、何件内覧したかな?
かなりした。
妥協点ばかり目についてしまって、完璧に気に入るものがなかったんだ。
デートのあと、送ってもらうことを考えて、凪くんのうちから遠くても一駅分。
そこはキープ。
オートロック、二階以上も外せない条件でね、そしたら築年数新しいと家賃高いし、そりゃ迷うでしょ?
一番難しいのが、都市ガス物件だった。
どうしても都市ガスが良くて、でも賃貸にはなんで少ないの?
とりあえず3件に絞ったので、持ち帰って検討してまた来週来ますって帰ったわけ。
「この中から選びたいんだ」
凪くんに見せた。
そして担当さんの話をしていたら
「それってヤバくね? 女性に変えてもらえよ」
「えーでももう、ここまで決まったのに」
「やっぱ結菜、危機管理甘すぎ、俺には担当美容師男にしろって言ったくせに」
そんなチャラい不動産屋やめろって言われちゃった。
こ、これは! 凪くんが嫉妬してくれてる!? わわ!
結局、決めようとした物件を、ほかの不動産屋さんも扱ってるかも?
てことで、凪くんと一緒に改めてほかのとこに行くことになった。
ごめんなさい、あの担当さん。




