13、名無しの匿名希望
「あなたはなぜこんな所に?」
「ママに会いに来た」
「ここは『死後の世界』ですよ?」
「愛はそんなことで止められねぇ」
「……あなたが私を殺したのに?」
アマテラスAIの普及により、世界はより良くなった…筈だった。
「文也!出番だ!」
「またですか!?」
暴走の多発。悩める子供の多い学校では、AIを誤った使い方をして暴走する者が増えたのだ。
「今度の原因は!?」
「AIにジグが嫉妬!」
冷静に見ていたカヘは真面目な顔で言う。
「この世界と相性悪くないですかジグって奴!?」
ジグは己のもう一つの人格。本能とは別に生まれる相棒の様なもの。その立ち位置をアマテラスAIは奪おうとしてしまう。
「ツクヨミ この現状はどう思います?」
「僕の所為じゃない僕の所為じゃない僕の所為じゃ……」
「逃げないで下さい!!!」
「ごめんなさぁい!!!!」
クールな顔をしていたツクヨミだが、この時ばかりは子供の様に泣いていた。
「ツクヨミはジグを卒業したんですか?もしまだなら一緒に……」
無言でツクヨミは短い刀を見せる。音も無く現れた武器は、ジグによる物だと文也は納得する。
「…『カタナサマ』」
「はい?」
「僕の!ジグ!!会話もできない短刀!!!終わり!!!!」
「終わらないで……」
文也は落胆した。
「…ちなみに暴走した対象は?」
「目の前」
カヘが指差す先に、異形の化け物が居た。
「「近!?」」
驚く文也とツクヨミ。だがツクヨミはすぐに息を整える。
深呼吸して、息を止めた。その瞬間、異形は倒れた。
「これで一件落着って事で……」
皆がポカンとしているのをゆっくり見回すツクヨミ。長い沈黙の後、顔を赤くしてまた息を止めた。その瞬間ツクヨミの姿は消えてしまった。
「…どう言う事?」
「どう言う事だろうな!」
文也の問いにカヘは和やかに言う。一部始終を影で見ていたヒカネが呟く。
「あれ…私と同じ…」
そんなヒカネを、疑問符を浮かべながら叩くタツキ。リアクションが無いのを良い事にひたすら殴っていた。
後で謝りながら頭を撫でたらしい。
「異形…化け物…もっと良い名称は無いものか……」
「何を考えているの?『カムイ』」
「守る為には何が必要だと思う?『クナ』」
「力とかかしら?」
「『敵』だ 争いというものは敵が居るから発生する」
「難しい倫理は好きじゃないわ」
「私は好きだ 不幸な物語ほど唆る」
「気持ち悪い」
「……真顔で言われると傷付くな …しかし名前が無いのは不便だ ならばそれすら名前にしてしまおう なぁ…『名無し』」
名を持たぬ者ほど恐ろしい物は無い。




