第四章十二話 一番でなければ死ぬ
「…………」
サブローを見送った直後、シノノメのポケットが光った。
「ん?」
プレートを取り出し、表示を見る。
「順位が変わってる……?」
「…………」
「オイラの戦闘関係の順位、二つも落ちてる……?」
シノノメは首を傾げた。
「一人はサブローだとしても納得できるけど」
もう一人の表示を見る。
「誰だ?」
「ライトじゃないのは分かるんだけど……」
◇
コロシアム。
サブローとレオンは、既に開始位置へ立っていた。
残るのは、試合開始の合図だけ。
「ライト、遅いなあ……」
観客席でルナが呟く。
「何やってんだ、あの筋肉」
サブローへ視線を移す。
「…………」
「死なないでね」
◇
サブローの目は、既に閉じていた。
「始まる前に聞かせろ!」
「何だ?」
「何で!」
サブローの声が震える。
「俺の国を!」
「…………」
「仲間を!」
「…………」
「妻を!」
「…………」
「コタロウを殺したのに!」
叫ぶ。
「お前は一国の王になって! 子どもに優しくしてやがるんだ!」
「…………」
レオンは少し考えた。
「お前」
「何だよ」
「あの童の父か」
「…………」
「思い出した」
サブローの拳が震える。
「何年もかけて、わざわざ我を追ってきたのか」
レオンは淡々と続ける。
「生きているのだから、忘れてどこかで暮らせば良かったものを」
「思い出してくれてどうもありがとう!」
サブローが吐き捨てる。
「いいから質問に答えろよ! このクソ野郎!」
「我の呪いは、自分が一番ではないと認識した瞬間――」
「…………」
「呼吸が止まる」
「……何?」
レオンは胸へ手を当てる。
「故に若い頃の我は、常に一番でいなければ死ぬという恐怖に追われていた」
「…………」
「誰かが自分より優れている。その可能性すら許せなかった」
「だから?」
「一番になるためなら、何でもした」
「…………」
「お前の童の能力を手に入れ――」
拳を握る。
「我はようやく、簡単には一番から落ちぬと思えるほど強くなった」
「…………」
「恐怖が薄れ、そこで初めて周囲を見る余裕が生まれた」
レオンは観客席の子どもたちを見る。
「今では、子どもはまだ順位すら決まっていない、未来そのものだと思っている」
「…………」
「故に大切にしている」
「テメーの!」
サブローの身体が震える。
「テメーの心に余裕を作るために!」
「…………」
「俺の仲間も!」
「カホも!」
「コタロウも!」
「殺されたってのか!」
「そうなるな」
「…………!」
「それに」
レオンは平然と言う。
「お前の童は、我に選ばれ、その能力は今も我の中で生きている」
「……」
「光栄なことではないか?」
「…………」
「もういい」
「?」
「それ以上――」
サブローが構える。
「喋るな」
「子どもが国の宝だから怒っているのか?」
「…………」
「我が国でも、子どもは大切にしている」
「……」
「そういう意味なら、貴様の言い分も理解できなくはない」
「…………」
「無視か」
「…………」
「まあいい」
レオンが笑う。
「さあ始めよう」
「…………」
「我を楽しませてくれ」
開始の合図が鳴った。




