↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
54/57

第四章十一話 止めに来た


 決勝当日の早朝。


 シノノメ道場を出ようとするサブローへ、背後から声がかかった。


「サブロー」


「…………」


「ちょっと待ってくれ」


「久しぶりだな、ライト」


 サブローが振り返る。


「何だよ。激励にでも来たのか?」


「ちげーよ」


「じゃあ何だ」


「止めに来た」


「…………」


「何言ってるか分かってんのか?」


「分かってる」


 サブローの表情が険しくなる。


「ライト。お前でも許さねえぞ」


「俺が言うことが綺麗事だってのは分かってる」


「…………」


「俺は家族を殺されたわけじゃねえ」


「やめろ」


「だから、サブローの気持ちを全部分かるなんて言わねえ。でもよ!」


 ライトが叫ぶ。


「死ぬまで復讐に支配されて生きることを、殺された家族が望んでるのか?」


「ライト、やめろ」


「それに」


「やめろって言ってんだろ」


「少なくともレオンはサブローより強い!」


「…………!」


「殺されちまうかもしれねえ!」


「うるせえ」


「俺は!」


 ライトが拳を握る。


「仲間がそんなふうに死んでいくところ、見たくねえだけだ!」


 サブローの瞼が閉じた。


「うるせええええ!」


「……!」


「テメーみたいなガキに、何が分かるんだ!」


「…………」


「お前が納得するようにぶっ飛ばしてやる!」


 サブローが構える。


「かかって来い!」


「朝からうるせえ!」


 道場からシノノメが飛び出してきた。


「道場の前でそんなことするな! 場所を見繕ってやる! ついて来い!」


 物陰から、ランとバリが二人の様子を見ていた。


     ◇


 道場裏、山中の開けた土地。


「ここなら良い! 思う存分やりな!」


 シノノメが下がる。


「ありがとう、シノノメ」


「気にするな!」


 シノノメはライトを見る。


「それよりライト! 本気でやれよ?」


「当たり前だ!」


 ライトは目を閉じる。


 この一か月、サブローを止めるために続けてきたトレーニング。その中で記録を更新した瞬間の幸福を思い出す。


「マッスル・ライトニング!」


 雷が落ち、全身に電撃を纏う。


「少なくとも、レオンはこの状態の俺と同等に攻防できた!」


「…………」


「俺に勝てないようじゃ――」


 地面を蹴る。


「アイツには勝てねえぞ!」


「……!」


 サブローは目を閉じたまま、その攻撃をかわした。


「なっ!?」


 ライトが振り返る。


「嘘だろ!?」


 目を閉じても、ある程度戦えることは知っていた。だが以前のサブローに、今の速度をかわせるはずがない。


「フンフンフンフンフンフンフンフン!」


 連撃。


 サブローはそれすら避け、受け流していく。


「よお」


「……!」


「そんなもんかよ?」


「何!?」


「それとも俺と戦うからって」


 サブローが拳を弾く。


「消費してる記憶が弱いもんとか、ふざけたことやってねえだろうな?」


「俺がそんな手抜きしねえって!」


 ライトが殴りかかる。


「お前も分かってんだろうがあああ!」


「防御面は納得したか?」


「……!」


「なら、次は攻撃が通じるか見せてやる」


 サブローはライトを弾き飛ばし、距離を取った。


「その構え……」


 シノノメ流武術。


「舐めんなよ!」


 ライトも構える。


「ヴォルケニア式武術!」


「一式!」


「灰神楽!」


「そして! 二式!」


「黒煙!」


 変則的な突きと蹴りが、サブローへ襲いかかる。


「何やってんのか知らねえけどよ!」


 サブローが攻撃を受け流す。


「変則的に動こうが!」


 気配を辿り、拳を捌く。


「お前の気は、完璧に辿れてんだよ!」


 サブローが構えた。


「シノノメ流武術!」


「一式!」


「巻積連破!」


 無数の拳が、ライトの身体へ叩き込まれる。


「ぐおっ!」


「ぐっ……!」


 ライトが膝をつく。


 サブローは腰の刀を抜いた。


「峰打ちなら問題ねえよな?」


「…………」


「俺も本気だ。お前も本気で来い」


「だから……!」


 ライトが立ち上がる。


「最初から本気だって言ってんだろうがあ!」


 地面を蹴る。


「ヴォルケニア式武術!」


「五式!」


「爆縮!」


「速っ……!」


 シノノメですら、かろうじて視線で追える速度。


 ライトが一気にサブローへ迫る。


「うおおおお!」


「シノノメ流剣術奥義!」


 サブローが刀を振るう。


「積乱神雷!」


 ――ドンッ!


「…………!」


 ライトの身体が止まり、その場へ崩れ落ちた。


「峰打ちだ」


 シノノメはサブローを見る。


「その奥義は、一撃必殺を想定した最大奥義だ」


「…………」


 シノノメが目を細める。


「やっぱり、まだ形だけだな」


「形だけで」


 サブローは刀を鞘へ戻す。


「この威力なら十分でしょ」


「……」


「じゃあ、そろそろ行くわ」


 サブローが背を向ける。


「ありがとな」


 振り返った。


「師匠」


「…………」


「それに、ラン、バリ」


 物陰の二人を見る。


「短い間だったけど、色々世話になりました」


「おう」


 シノノメも笑う。


「まあ、気張らず頑張れよ」


「……ああ」


 サブローは目を開いた。


 そして、決勝戦のコロシアムへ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。