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第四章十話 必ず殺す


 だが、力の差は大きかった。


「ぐっ!」


 サブローの身体が地面へ叩きつけられる。


「くそ……!」


「終わりだ」


 レオンが拳を振り上げる。


 その時。


「お父さん!」


「!?」


「何で戻ってきた!」


「うわあああ!」


 コタロウがレオンへ体当たりする。


「むっ!」


 僅かにレオンがよろめいた。


「コタロウ!」


 サブローが叫ぶ。


「何やってんだ!」


「早く逃げろ!」


「騎士団のみんなにも声かけた!」


「何!?」


「そろそろ来るよ!」


「みんな父さんを助けに来てくれる!」


「違う……!」


「え?」


「あいつの狙いは」


 サブローの顔から血の気が引く。


「お前なんだ!」


「……え?」


 次の瞬間。


 レオンの手がコタロウの頭を掴んだ。


「コタロウ!」


 遠くから騎士団員たちの声。


「団長!」


「サブロー団長!」


「素晴らしい能力だ」


「やめろ!」


「こうか?」


 レオンが胸を叩く。


「……!」


 身体が加速する。


「返せ!」


「コタロウを返せ!」


 レオンはコタロウを空中へ放った。


「!」


 レオンの姿が消えた。


 次の瞬間、騎士団員たちの悲鳴が響く。


「ぐあっ!」


「何だ、この速さ――!」


 声はすぐに途絶えた。


 コタロウが地面へ落ちる。


「コタロウ!」


 動かない。


「おい」


 サブローが這う。


「コタロウ」


 返事はない。


 周囲では、駆けつけた騎士団員たちが次々と倒れていた。


「…………」


「素晴らしい」


 レオンが自分の手を見る。


「素晴らしいぞおおおおお!」


「…………」


「しかも」


 笑う。


「この能力を試すのに、もってこいの国が近くにある!」


「テメー……!」


 レオンの蹴りがサブローへ突き刺さった。


「がっ!」


 吹き飛ぶ。


 壁へ激突。


「ぐ……」


 血を吐く。


 視界が。


 暗い。


「くそ……」


 怒り。


 憎しみ。


 瞼が閉じてしまっている。


「こんな時に限って……」


「前が見えねえ……」


 這う。


「コタロウ……」


「病院連れてってやるからな……」


「みんなも……」


「きっと無事だよな……」


     ◇


 しばらくして、怒りが僅かに落ち着き、目が開いた。


「…………」


 最初に見えたのは、燃える街だった。


「…………」


 倒れた仲間たち。


 崩れた建物。


 そしてコタロウ。


「…………」


 サブローはその場で吐いた。


「コタロウ……」


 息子の身体を背負う。


「カホ……」


 炎の中、自宅へ向かう。


「カホ!」


「どこだ!」


「カホ!」


「…………」


 家は崩れていた。


 瓦礫の隙間から。


 見覚えのある服。


 腕。


「…………」


「カホ……?」


 返事はない。


 サブローは膝から崩れ落ちた。


「…………」


「レオン」


 拳を握る。


「レオン・ワンズ」


 震える。


「レオン・ワンズ!!」


 叫んだ。


「お前を……!」


「必ず殺す!」


     ◇


「サブロー」


「……!」


 肩を叩かれ、目を開く。


「すっげー汗」


 シノノメが見下ろしていた。


「大丈夫か?」


「……ああ」


     ◇


 決勝前日。


「結局」


 シノノメが腕を組む。


「奥義以外はだいたい覚えられたな」


「ありがとな」


「後は」


 サブローが立ち上がる。


「何とかするよ」


「死ぬなよ」


「…………」


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