第四章九話 能力者狩り
「パパー!」
「ん……?」
「起きてよー!」
布団の上で子どもが跳ねる。
「早く遊ぼー!」
「痛い痛い!」
サブローが布団から顔を出す。
「分かったよ。今行くって」
「コラ、コタロウ!」
妻が部屋へやってくる。
「パパは仕事で疲れてるんだから、休みの日くらいゆっくり寝かせてあげなさい!」
「だってー!」
コタロウが頬を膨らませる。
「普段仕事で全然いないじゃーん!」
「ありがとう、カホ」
サブローは起き上がる。
「コタロウ。ご飯食べてからでいいか?」
「今遊びたーーーい!」
「しょうがねえなあ」
サブローが立ち上がる。
「おりゃー!」
「ひゃー!」
コタロウが笑いながら逃げる。
「追いかけてきたー!」
「ったくもう……」
カホが呆れながら笑う。
「コタロウ!」
「何!?」
「このまま公園でも行くか!」
「いいのー!?」
「ああ!」
「良いとも!」
「カホ!」
「何?」
「悪いけど弁当作って、お前も公園来てくれるか?」
「そう言うと思って」
カホが籠を持ち上げる。
「もう作ってあるわ」
「流石!」
「じゃあピクニック行くぞー!」
「やったー!」
「ふふ」
◇
サブローは、とある国の騎士団長だった。
国を守ることは、妻と息子を守ることでもある。その仕事に誇りを持っていた。
コタロウはそんな父と、優しい母が大好きだった。
休みの日には家族三人で出掛け、食べ、笑い、遊ぶ。
サブローにとって、それ以上の幸せなど必要なかった。
◇
そんな日々から、何年かが過ぎた。
「サブロー」
ある日、国王に呼び出された。
「はい」
「最近、この周辺の国や村で『能力者狩り』と呼ばれる者が現れているそうだ」
「能力者狩り?」
「強い能力を持つ者を探しながら、村や国を滅ぼしているらしい」
「…………」
「お前なら大丈夫だとは思うが」
「はい」
「警戒しておいてくれ」
「かしこまりました」
◇
その日の仕事を終え、サブローは家へ帰った。
コタロウは八歳になっていた。
「ぱぱ……じゃなくて!」
コタロウが言い直す。
「父さん! おかえり!」
「おう」
「稽古つけてくれよ!」
「いいぞ〜」
サブローは家の奥へ声をかける。
「カホー! 外で稽古してくる〜!」
「あんまり遅くならないでねー!」
「はいよー!」
「今日はさ!」
コタロウが嬉しそうに走る。
「新技考えたんだよね!」
「ほ〜」
「そいつぁ楽しみだ」
◇
稽古場。
コタロウが拳を握り、胸を叩く。
「いくよ!」
次の瞬間、速度も力も一気に跳ね上がった。
コタロウの拳が地面を抉る。
「いつ見てもコタロウの能力は凄いなあ」
サブローは気配を読みながら攻撃を避ける。
「はあ……はあ……!」
コタロウが止まる。
「胸叩いた後、身体能力が上がるって言ってもさ」
「うん」
「攻撃当たんなかったら意味ないよ……」
「いやいや」
サブローは笑う。
「父さんの変な能力より全然いいと思うぞ〜」
「そうかなあ」
「自信持てよ!」
「……うん!」
コタロウは笑った。
「ありがとう!」
その瞬間。
――ドンッ!
巨大な人影が、二人の間へ落ちてきた。
「コタロウ!」
サブローは反射的に攻撃し、巨体を吹き飛ばす。
「ぐっ!」
「逃げろ!」
「父さん!?」
「母さん連れて城へ行け!」
「でも!」
「城には父さんの仲間たちがいる!」
「父さんは!?」
「子どもが親の心配するのなんて百年早い!」
サブローは構える。
「ここは任せろ!」
「…………」
「早く行け!」
「……分かった!」
コタロウが走る。
「後で必ず助けに来るから!」
「さっさと行け!」
サブローは巨体を見る。
一度攻撃しただけで分かった。
――俺より強い。
それでも。
騎士団長として。
父として。
逃げるわけにはいかない。
――俺一人で敵わなくても。
――騎士団全員なら可能性はある。
――それまで時間を稼ぐ!
「お前」
巨体の男が立ち上がる。
「強いな」
「……」
「名は?」
「サブロー・アングリラ」
「お前は?」
「我の名は」
男が答える。
「レオン・ワンズ」
「……!」
「能力を見せてみろ」
「お前……」
サブローが構える。
「能力者狩りか!」
「そんな通り名になっているのか」
レオンは笑う。
「くだらん」
一瞬。
距離が詰まる。
「なっ!?」
レオンの手がサブローへ触れた。
「ふむ」
「何しやがった?」
「そういう能力か」
「は?」
「これは要らんな」
「何言ってるんだ!?」
「我の能力はコピーだ」
「……コピー?」
「触れた相手の能力と代償を知り、必要なものだけを最大三つまで保存して使う」
「そんな重要なことをペラペラ喋っていいのか?」
「冥土の土産というやつだ」
「……!」
「それに今日は良い日だからな」
「何?」
「探していた能力が見つかった」
「何だって?」
「あの子ども」
レオンがコタロウの逃げた方向を見る。
「身体能力強化だな」
「…………!」
「我はずっと」
レオンが自分の拳を見る。
「この肉体を、さらに強くする能力を探していた」
「…………」
「あれがあれば」
笑う。
「我は、我が思い描く一番になれる」
「余計に通すわけにはいかねえ!」
サブローが襲いかかる。




