第四章五話 探していた仇
宿へ帰る途中。
「ん?」
少し離れた場所に、サブローが立っていた。
目を閉じている。
「サブロー?」
ライトが近づく。
「どうした? 宿に戻ったんじゃねえのか?」
「ライトのことだから、帰り道迷いそうだと思ってな」
「マジか!」
「一旦宿の方まで行ったんだけど、ちょっと休んでから戻ってきた」
「ありがとう!」
「……それよりライト」
「ん?」
サブローの声が低い。
「お前がさっき話してたあの男」
「レオン?」
「お前にとって何なんだ?」
「何って?」
ライトは首を傾げる。
「決勝でシノノメ相手に圧倒的に勝ってたから、トレーニングについて聞こうと思って話しかけただけだぞ」
「…………」
「それがさ!」
ライトは楽しそうに続ける。
「あいつ、この国の王なんだってよ! びっくりした!」
「…………」
「おまけに、あの風貌でやたら子どもから好かれててさ!」
「…………」
「友達になれそうな良い奴だったぞ!」
「…………」
「明日の戦闘力部門にも出るみてーだし、俺たちも良い勝負できるよう頑張ろうな!」
「……本気で言ってるのか?」
「え?」
「アイツの能力の一つで洗脳でもされたか?」
「何言ってんだ?」
「くそ……!」
サブローの拳が震える。
「こんなことなら最初からライトと一緒に見に行けば良かったぜ……!」
「話が分からん!」
ライトが声を上げる。
「サブローが目閉じてるってことは、何かにキレてんだろ?」
「…………」
「何にそんな怒ってるんだよ!?」
「ライト」
サブローが静かに言った。
「お前が『友達になれるかも』って言ってたあの男はな」
「うん」
「俺の妻と」
「……え?」
「子どもを殺した」
「…………」
「俺がずっと探してた」
声が震える。
「仇なんだよ」
「…………」
「嘘だろ」
「嘘じゃねえ!」
サブローが叫ぶ。
「俺がこんなことで嘘つくわけねえって、俺と旅してりゃ分かるだろ!」
「…………」
ライトがサブローの肩へ手を伸ばす。
「いつものサブローらしくねえぞ!」
「触るな!」
「落ち着いてから話聞かせてくれよ!」
「落ち着いていられるわけねえだろ!」
サブローが怒鳴る。
「やっと見つけた仇なんだぞ!」
「サブロー!」
「今すぐにでも殺してやりてえんだよ!」
「俺の話聞けよ!」
「落ち着けって!」
「うるせえ!」
「あんたたち何してるの!」
「ルナ!」
振り返ると、ルナが立っていた。
「サブローが迎えに行ってから全然帰ってこないから心配して来てみたら……」
二人を見る。
「怒鳴り合ってるし」
「何なの?」
「…………」
サブローはしばらく黙っていた。
やがて大きく息を吐き、瞼を開く。
「お前たちには関係ない」
「サブロー?」
「ここまでの旅」
サブローは二人を見る。
「すげえ楽しかった」
「…………」
「それは嘘じゃない」
「なら――」
「でも」
サブローは首を振る。
「やっと俺の野望を達成できそうなんだ」
「…………」
「俺はここから別行動させてもらう」
「何言って――」
「今までありがとな」
サブローは背を向ける。
「ちょっと待てよ!」
ライトが叫ぶ。
「サブロー!」
だが、サブローは振り返らなかった。
そのまま街中へ消えていった。
◇
「どういうこと?」
ルナが尋ねる。
「説明して」
「ああ……」
ライトは、サブローから聞いた話をルナへ伝えた。
「なるほどねえ……」
「どうすりゃいいんだよ」
「一旦、明日の大会には来ると思う」
「うん」
「様子を見ましょう」
「……分かった」
◇
翌日。
戦闘力部門もトーナメント形式だった。
組み合わせでは、サブローとレオンは互いに決勝まで勝ち上がらなければ対戦できない位置にいる。
「サブロー!」
ライトは会場でサブローを見つけ、声をかけようとした。
しかし、目が合った瞬間、サブローは足早にその場を去った。
「…………」
「ライト…」
「分かってるよ」




