第四章三話 万年二位の幸せ
続いて、ライトの筋力部門が開催された。
「フンフンフンフンフンフンフンフン!」
ライトは次々と競技を突破していく。
「フーーーーーーン!」
出された課題を片っ端から攻略し、圧倒的な強さでトーナメントを勝ち上がった。
そして準決勝。
「お前は筋肉の申し子なのかあああ!?」
司会者が絶叫する。
「準決勝も盛り上げてくれ〜! ライト・ザック・バーナル〜!」
「うおおおおおお!」
「そして迎え撃つのは〜!」
反対側の入場口から、一人の男が現れる。
「戦うことに関するあらゆる部門で、万年二位!」
「だけどその実力は圧倒的!」
「シノノメ・ナグモ〜!」
会場は、むさ苦しい男たちやシノノメを慕う者たちで埋め尽くされていた。
「うおおおおおお!」
ルナが鼻を押さえる。
「この会場、心なしか汗臭くない?」
「俺もそんな気がする」
サブローも頷いた。
シノノメはライトほど大柄ではないが、がっしりとした身体には達人らしい雰囲気があった。
「準決勝は〜!」
司会者が叫ぶ。
「壁押し対決!」
「両選手がそれぞれ壁を押し合い、先に押し出された方の負けだあああ!」
「うおおおお!」
ライトが壁へ手をつく。
「唸れ! 俺の筋肉たちいいいいい!」
「ライト君だっけ?」
シノノメも構える。
「熱いねえ〜。嫌いじゃないよ!」
「シノノメだっけ!?」
「ああ」
「負けねえぞおおおお!」
「良い勝負をしよう!」
開始の合図が鳴った。
「うおりゃあああああ!」
「どっせええええええい!」
両者が一斉に押す。
だが、壁はピクリとも動かない。
互いの力は完全に拮抗していた。
「ぐっ……!」
ライトの顔が歪む。
「やべえ! 昨日の背中トレーニングの影響か、いつもより広背筋と三角筋に粘りが少ねえ!」
「言い訳かあ!?」
「んなことはなああああい!」
ライトが叫ぶ。
「気合いいいいいい!」
「そう来なくちゃな!」
ライトがさらに力を込めると、僅かに壁が動いた。
「おおっ!」
観客が沸く。
しかし、シノノメはライトの呼吸を見ていた。
「今!」
ライトが息を吐き、僅かに力が抜けた瞬間。
シノノメが一気に壁を押し込む。
「なっ!?」
そのまま押し切った。
「勝者! シノノメ・ナグモ〜!」
「くっそおおおおおお!」
ライトは地面へ膝をついた。
「すまん! 俺の筋肉たち!」
「今日からまた修行だああああ!」
「元気だねえ」
シノノメが笑う。
「シノノメ!」
「ん?」
「お前の筋肉たち、すげえな!」
「ありがとう」
「一個だけ教えてくれないか?」
「なんだい?」
「司会は『万年二位』って言ってたけどさ」
「うん」
「シノノメはそう言われても、全然悔しそうじゃねえよな?」
「そうだねえ」
「何で、一番にならなきゃ幸せじゃないって国で、一番じゃなくても平気なんだ?」
「ああ」
シノノメは観客席を指差した。
「理由は、あれだよ」
「誰だ?」
「オイラの弟子たちさ」
そこには道着姿の男女が何人もいた。
「師匠〜!」
「今日こそ一位だあー!」
「一位取るとこ見たいぞー!」
シノノメは嬉しそうに笑う。
「オイラはね」
「うん」
「弟子たちがこの国で一番を目指して、少しずつ成長していくのを見るのが幸せなんだよ」
「…………」
ライトは笑った。
「そうか!」
「ああ」
二人は握手を交わした。
◇
「ナイス筋肉! ドンマイ筋肉!」
「今日の筋肉、輝いてたぞ!」
サブローが勢いよく言う。
「よっ! 肩にメロン乗ってるのかい!」
「ありがとおおおお!」
ライトは満面の笑みを浮かべた。
「サブローと筋肉が出る戦闘部門は明日でしょ?」
ルナが言う。
「私は宿に戻るけど、二人はどうする?」
「俺も宿に戻ろうかな」
サブローがライトを見る。
「筋肉は?」
「筋肉と書いてライトと読む、で合ってる?」
「合ってるよね?」
「俺はせっかくだから、このまま決勝まで見ていく!」
「じゃあ先帰るね、馬鹿筋肉!」
「はいよ〜」
サブローも続く。
「道に迷わないように気をつけて帰ってくるんだぞ〜、筋肉大臣」
「日に日に仲良くなるにつれて、俺の扱いが筋肉そのものになっていく……」
ライトは拳を握る。
「だが、それで良い!」
「それで良いのだああああ!」




