第四章二話 笑わない選択
ルナが出場するモテ部門の開催日。
「ルナ〜! 頑張れよ〜!」
「ルナちゃんなら良いところまで行けると思うよ!」
「ありがとう!」
ルナは胸を張った。
「当然だけど!」
ルナは順調に勝ち進み、準々決勝を迎えた。
「さああああ!」
司会者の声が会場に響く。
「今大会のダークホース! ルナ・ナイト・メアルと相対するのは〜!」
観客が沸く。
「前回大会優勝者! ウツク・シー!」
「うおおおおお!」
「そして準々決勝のアピール対決は〜!」
司会者が腕を上げる。
「可愛さアピールだああああ!」
歓声が巻き起こった。
「…………」
ルナは対戦相手、ウツク・シーを見る。
まつ毛は二メートル近くまで伸びているのではないかと思えるほど長い。
顔は何かで真っ白に塗りたくられ、髪は激しく縮れていた。
さらに身体は、一般的に想像する女性らしい華奢さとは正反対。筋骨隆々で、逞しい。
「これが……前大会の優勝者……?」
ルナは小声で呟いた。
「勝ったな」
しかし、ウツク・シーが演技へ入った瞬間。
「…………!」
ルナの目が見開かれた。
その見た目からは想像できないほど繊細で。
美しく。
儚げで。
動作の一つ一つから、可愛らしさが溢れていた。
会場のボルテージは最高潮へ達する。
「すっげえ……」
「ギャップって怖いねえ」
ライトとサブローも見入っていた。
続いてルナの番。
ルナも十分な演技を披露した。
そして最後。
本来なら笑顔で締めるべき場面。
「…………」
ルナは一瞬迷った。
だが、笑わなかった。
代わりに相手役を優しく抱き締める演技へ変える。
会場が僅かにざわめいた。
◇
結果。
ルナは準々決勝敗退となった。
審査員からは、
『最後に笑顔があれば、さらに可愛らしさが伝わった』
と評された。
「お疲れ、ルナ〜!」
「良い演技だったなあ!」
「おじさんもルナちゃんの方が感動したよ」
「へへ、ありがと」
笑顔がなかったことを指摘されても、ルナは気にしていなかった。
「それよりさあ!」
「ん?」
「あの見た目からあの演技って、ギャップ凄すぎて風邪引くかと思ったんだけど!」
「分かる!」
「いや〜、強敵だったねえ」
三人はいつもと変わらない調子で話していた。




