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第四章一話 一番になる国


「次の国はどこに行くんだ〜?」


 ライトが尋ねた。


「ずっと思ってたけど、ライトって地図持ってないの?」


 ルナが呆れたように聞き返す。


「いや〜。ダンベル村には、風で流れ着いたすっごい古いやつしかなかったっぽくてさ。役に立たないんだよなあ。旅の準備の時に、村のトレーニング仲間がくれたんだけどよ!」


「どのくらい古いんだ?」


 サブローが興味を示す。


「ちょっと見せてくれよ」


「ほれ」


 ライトは荷物から“地図らしき物”を取り出した。


「…………」


「…………」


 ルナとサブローが黙り込む。


 紙には世界地図ではなく、巨大なダンベルが描かれていた。


 右端には、小さな文字で、


『こんな感じの世界だったらいいのにね』


 と、ダンベル村の友人が書き残していた。


 ルナは深いため息を吐いた。


「これ、地図じゃないよ……」


「これは……落書きか……?」


「落書きじゃねえ!」


 ライトは紙を高々と掲げた。


「心意気だああああ!」


「地図としての役割ゼロじゃない」


「で、ちゃんとした地図だと次はどこになるんだ?」


「切り替え早いな」


 ルナは自分の地図を広げる。


「ここからだと……グラディア王国だね!」


「グラディア?」


「海を渡る!」


 サブローが頷いた。


「グラディア王国って言ったら、小さな島国だけど、世界中から何かしらの分野で優れた者や達人たちが集まって、日々しのぎを削ってる国だな」


「へえ〜!」


 ルナが胸を張る。


「まあ、私の可愛さなら余裕で一位かな!」


「俺の自慢の筋肉たちが、世界の頂点に立つ時が来たか……」


 ライトも拳を握る。


「ははは……」


 サブローは苦笑した。


「その類いを競う部門があるかは分からないけどな。まあ、おじさんも戦闘技術なら良い線いってると思うんだよねえ」


「よーし!」


 ライトが叫ぶ。


「とにかく早く行こーぜ!」


「そうね!」


     ◇


 三人はグラディア王国行きの船乗り場へ到着した。


「お前たち三人が今日の客かあ?」


 船長らしき男が、三人を上から下まで眺めた。


「うーむ……まあまあだな。送っていってやる」


「どういうことだ?」


 ライトが首を傾げる。


「あんまりレベルの低い奴を送っても意味ねえからよ!」


「は?」


「島のレベルが下がっちまうだろ?」


「なるほどな」


 ライトは腕を組む。


「まあ、俺は問題ねえな」


「私も」


 ルナも当然のように頷く。


「おじさんも、まあまあじゃなくて結構上だと思うけどなあ」


     ◇


 船旅を終え、三人はグラディア王国へ到着した。


 入国手続きを終えようとしたところで、係員が声をかけてくる。


「入国される皆様。グラディア王国へ滞在される際はこちらのプレートをお持ちください」


 金属製の小さなプレートが、一人ずつ手渡された。


「何だこれ?」


 ライトが手に取った瞬間、文字が浮かび上がった。


「うおっ!?」


 見覚えのない文字なのに、その意味だけは直接頭の中へ流れ込んでくる。


 ライト・ザック・バーナル。


 ――筋力 三位。


 ルナ・ナイト・メアル。


 ――顔の良さ 七位。


 サブロー・アングリラ。


 ――戦闘力 四位。


「この数字って何なんですか?」


 ルナが係員へ尋ねた。


「この国では、一番になることが幸せとされています」


「一番?」


「はい。国民はそれぞれ、自分の得意な分野で一位になることを目指し、日々努力しています」


 係員はプレートを指差した。


「そのプレートは、持ち主がこの国で最も高い順位を取れる分野を判断し、順位を表示する物です」


「なるほど」


「皆様も、ぜひ一位を目指して頑張ってください」


「俺より強い筋肉を持ってる奴がいるだってええええええ!?」


 ライトがプレートを掲げて叫ぶ。


「どこのどいつじゃい!」


「四位か……」


 サブローは腕を組んだ。


「良い方なのかな。まあ、実際戦わなきゃ分からないけどねえ」


「…………」


 ルナの手が震える。


「七位……?」


 プレートにヒビが入りそうなほど強く握り締めた。


「顔の良さ七位って、どーいうことじゃい!」


「ルナちゃん、壊すなよ」


「というか、どこで判定してんだよ!」


 係員は、そんな三人をニコニコと眺めていた。


「皆様、各々かなりの自信をお持ちのようで」


「当然!」


「でしたら、ちょうど良い催しがありますよ」


「催し?」


「この国では半年に一度、各分野の順位を改めて決める大会が開催されます」


「大会!」


 ライトの目が輝く。


「国を挙げたお祭りのようなものですね」


「へえ〜!」


「そして皆様は運が良い」


 係員が笑う。


「次回の大会は、なんと二日後です」


「やるぞおおおおお!」


「別に出ても良いけど……」


 ルナは髪をかき上げる。


「モテまくっちゃったら、どうしましょう……」


「祭りかあ!」


 サブローも楽しそうに笑う。


「いいねえ〜!」


     ◇


 三人は、それぞれ自信のある部門へ出場することになった。


 ライトは――筋力部門と戦闘力部門。


 サブローは――戦闘力部門。


 ルナは――モテ部門。


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