三章十五話 運が悪いね
それから約一か月後。
「囚人番号三〇七!」
「ん?」
「複数人の面会者だ!」
「複数人?」
ユメルが首を傾げる。
「特例だぞ。面会室へ来い」
「珍しいですねえ〜」
「今更、わたくしに誰が会いに来るんでしょうか〜」
◇
面会室には、三人の人物が待っていた。
黒髪の青年。
ポニーテールの女性。
そして、銀髪の大柄な男。
「やあ、ユメル!」
黒髪の青年が明るく手を上げる。
「聞いたよ〜」
「右手、使い物にならなくなったんだって?」
「……!」
ユメルの顔が一気に明るくなる。
「貴方は!」
「会いに来てくださったのですね〜!」
「感激です〜!」
「それで」
青年はユメルの右手を見る。
「まだ能力使えるの?」
「ええと〜」
「質問に答えなさい」
ポニーテールの女性が冷たく言う。
「は、はい〜」
ユメルは右手を見る。
「現状では無理です〜」
「指もまともに動きませんし〜」
「義手で条件を満たせるか試してないので、何とも言えませんが〜」
「気合いが足りてないな」
銀髪の大男が言う。
「…………」
ユメルが顔を向ける。
「気合いでどうにかなる問題ですかねえ〜」
「なる!」
「なるの!?」
黒髪の青年は笑いながら、少し考える。
「ん〜」
「能力使えるか微妙」
「もう王宮画家の立場もない」
「この国でも自由に動けない」
「…………」
青年は笑顔のまま言った。
「じゃあ、もういいや」
「…………え?」
「お疲れさん!」
「どういうことでしょうか〜?」
「ユメル」
青年が指を向ける。
「君さ」
「…………」
「運、悪いね」
「……?」
ユメルの表情が固まる。
「何を――」
青年は衛兵を見る。
「衛兵さーん」
「面会終わりで大丈夫でーす」
「ありがとうございました〜」
ポニーテールの女性も立ち上がる。
「それでは」
銀髪の男がユメルを見る。
「来世はもっと筋肉をつけろ!」
「何のアドバイスなんですか〜!?」
三人はその場を去っていった。
◇
その日の夜。
点呼中、ユメルは突然、大量の血を吐いた。
「が……っ」
「囚人三〇七!?」
そのまま床へ倒れる。
そして、二度と目を覚まさなかった。
◇
アルテミア王国の外。
ポニーテールの女性が地図を広げる。
「このルートですと」
「次はグラディア王国へ向かう可能性が最も高いかと」
「分かった!」
黒髪の青年が笑う。
「じゃあ、グラディアに行こうか!」
「グラディアはレオンがいるところか〜」
「なら心配ないかな」
「レオン!」
銀髪の大男の目が輝く。
「俺も一度、手合わせ願いたいぞおおおおお!」
「うるさい」
「すまん!」
三人はアルテミア王国を離れていく。
ライトたちを追うように同じ道を次の国へ向かって。




