三章十二話 死にたくなるほどの不運
「もういい」
ユメルが複数の銃を構える。
「死になよ!」
引き金へ指をかけた瞬間、大量の鳥、獣、昆虫がユメルの視界を覆った。
「何!?」
「間に合った!」
エデルが肩で息をしていた。
足元には、大量の紙が散らばっている。
「いや〜」
「若いって熱いねえ」
「久しぶりに感化されて」
笑う。
「結構いい絵描けた気がするよ」
「エデル!」
「今だ!」
ユメルの背後には、すでにルナが回り込んでいた。
その肩へ手を置く。
「……!」
「あんた」
ルナは静かに言う。
「昔の私に少し似てる」
「何?」
「夢が叶わなかったら、自分の人生全部が不幸になるって思ってた」
「…………」
「だから」
「いつか貴方にも」
「夢とは別に、自分を受け止めてくれる人が現れるといいね」
「小娘が――」
ルナが指を鳴らす。
――パチン。
「死にたくなるほどの不運―― ワースト・ラック・エヴァー!」
「そんな指パッチンごときで――」
ユメルが引き金を引く。
――パン!
「ぐっ!?」
鳥を払い除けようと身体を捻った瞬間、弾丸が自分の足を掠めた。
「な、何!?」
「くそっ!」
再び引き金を引く。
――バンッ!
銃が暴発した。
「うわあああああ!」
ユメルが右手を押さえる。
掌から先が酷く焼け、指が不自然な方向へ曲がっていた。
「わ、わたくしの手が……!」
焼けた右手が震える。
「指が……動かない……」
「絵が……」
「絵が描けなくなる……!」
ルナは距離を取り、肩で息をする。
身体の奥から、今まで吸収してきた不運が抜け落ちていくような感覚。
「……ユメル」
「あんた、不運だね」
「くそ……!」
ユメルが周囲を見回す。
「こうなったら!」
「王!」
「カノイ!」
「こっちへ来い!」
扉が開く。
国王。
そして、エデルの妻であるカノイ。
二人とも虚ろな目をしている。
「カノイ!」
エデルが叫ぶ。
「目を覚ませ!」
「国王!」
ルナがその顔を見る。
「思ってたほどイケメンじゃない!」
エデルは思わずツッコむ。
「今それ!?」
「こいつらを盾にして」
ユメルが息を切らす。
「あの方のところへ逃げる!」
さらに複数の操り人形を呼び寄せる。
その時、背後から声がした。
「そんなフラフラなら」
「マッスル・ライトニング使う必要もなさそうだな!」
「ライト!」
ルナが振り返る。
「今回はルナちゃんのおかげだねえ」
サブローも立っている。
「サブロー!」
「いや〜」
サブローが頭を掻く。
「酷い夢見せてくれたよ、本当に」
その表情が険しくなる。
「あ」
目が閉じる。
「怒りで見えなくなってきた」
「ライト」
「おう!」
「ユメルの位置、声で教えてくれ」
「必要ねえ!」
「何?」
「もう捕まえた!」
「速っ!」
ライトはすでにユメルを抱えていた。




