三章十一話 自分で進む
「そこを走ってくる女性〜!」
ユメルが叫ぶ。
「ルナ・ナイト・メアルさんで、お名前合ってますか〜?」
「そうよ!」
「だから何!」
「やっぱりおかしいな〜」
「何が?」
「わたくしの能力は〜」
ユメルが笑う。
「対象の本名を知り〜」
「その名前を呼び〜」
「本人が返事をした瞬間、夢世界へ接続するんですよ〜」
「…………」
「受付で本名を書いてもらったのも〜」
「当日、返事してもらったのも〜」
「そのためです〜」
「やっぱり!」
「なのに」
ユメルの声が歪む。
「何で貴女は起きてるんです〜?」
「あー、あの夢ね!」
ルナは走りながら答える。
「最悪だった!」
「え?」
「すっごく幸せな夢だった!」
「なら」
「だから最悪だったの!」
「……?」
「私がずっと欲しかったもの、全部揃ってた!」
「それの何が悪いんです?」
「それでも」
ルナはユメルを見据える。
「私、自分で捨ててきた!」
「…………」
「夢が叶ってない現実へ戻るって決めた!」
「理解できないなあ〜」
ユメルが拳銃を撃つ。
「夢が全部叶った世界ですよ〜?」
「現実より幸せじゃないですか〜!」
「皆さん、夢の中では笑ってますよ〜?」
「現実では辛くて」
「悲しくて」
「生きるのをやめたくなった人まで」
「夢の中では笑ってる」
「そんな人を現実へ戻す方が」
「残酷だと思いませんか〜?」
ルナは弾丸を避ける。
「人に選んでもらって叶える夢より!」
「自分でもがいて!」
一歩。
「苦しんで!」
一歩。
「叶っても!」
一歩。
「叶わなくても!」
さらに近づく。
「それでも、自分で選んで進む方が!」
ルナは叫ぶ。
「よっぽど価値がある!」
ユメルも叫び返す。
「皆が貴女みたいに強いわけじゃありませんよ〜!」
「夢に破れて壊れる人もいる!」
「何度も何度も、現実に負け続ける人もいる!」
「そんな人間に」
「まだ現実で頑張れって言う貴女の方が」
「よっぽど残酷じゃないですか〜?」
「だから!」
ルナも言い返す。
「人は助け合うんでしょうが!」
「…………」
「そもそも私は!」
弾丸を再び避ける。
「夢を追い続けろなんて、押し付けるつもりもない!」
「止まりたいなら止まればいい!」
「休みたいなら休めばいい!」
「諦めたっていい!」
「…………」
「でも!」
「それを決めるのは!」
ルナは自分の胸を叩く。
「本人でしょ!」
ユメルの表情が歪む。
「強者の理屈ですね〜」
「私だって強くない!」
「嘘ですよ〜」
「本当に強くない!」
ルナは叫ぶ。
「挫けそうになることもある!」
「騙されることも!」
「間違った道へ進むこともある!」
「私、この国に来た時だって!」
「エデルさんに酷いこと言った!」
「…………」
「止まったっていい!」
「戻ったっていい!」
「夢が叶わなくたっていい!」
一歩。
「それでも最後に」
拳を握る。
「自分で進むって決めたんだ!」
ユメルの表情から笑顔が消えた。
「……小娘が」
「偽善者ぶって語ってんじゃないよ」
声が低くなる。
「結果が全てなんだよ」
仮面の奥から怒りが滲む。
「夢を叶えられない奴は負け犬」
「進むことを諦めた弱者」
「それ以上でも、それ以下でもない」




