三章十話 夢に立ち向かう
「……っ!」
ルナが目を開く。
目の前には、ボロボロのエデル。
そして、相変わらずヘラヘラ笑っているユメル。
「エデルさん!」
ルナはエデルの肩へ触れる。
――パチン。
「うわっ!」
「ルナ!? 起きたの!?」
「うん!」
「どうやって!?」
「後で話す!」
ルナは周囲を見回す。
「とりあえず状況教えて!」
「分かった!」
「ユメルの能力で全員、夢世界へ飛ばされた!」
「うん」
「長時間眠っていると肉体と精神が壊れて、あいつの操り人形になる!」
「うん」
「俺は本名を登録してなかったから、能力に完全には掛からなかった!」
「なるほど!」
「あと!」
エデルはユメルを見る。
「術者が弱れば、これだけ大人数の夢世界を維持する力も落ちるはずだ!」
「じゃあ!」
「あいつを弱らせれば、自力で夢から出られなくても目覚める人がいるかもしれない!」
「了解!」
ルナが構える。
「私も戦う!」
◇
「あれれ〜?」
ユメルが首を傾げる。
「何で起きてる人がいるんでしょうね〜?」
「名前間違いですか〜?」
ユメルが拳銃を構える。
エデルは引き金が引かれるより早く、紙へ盾を描いた。
実体化。
――パン!
盾が弾丸を防ぐ。
「エデルさん!」
「何?」
「その能力って何でも出せるの?」
「何でもじゃない!」
「描いたものを現実へ出せる!」
「強っ!」
「でも、ちゃんと構造を理解してないものは出せない!」
「なるほど!」
「それに、絵の完成度が低いと実体化したものも弱い!」
「だから急いで描いた盾、もうヒビ入ってるのね!」
「そういうこと!」
再び弾丸が盾へぶつかる。
「あと!」
「何!?」
「壊れた物は、一か月間、同じものを実体化できない!」
「意外と制約多いな!」
「君の能力は!?」
「私は不運を吸収して、他の人に与えられる!」
「抽象的だね!」
「自分でもそう思う!」
二人は眠っている参加者たちへ弾丸が当たらないよう、移動しながら話す。
「私が今まで溜めてきた不運を、ユメルへ渡せれば倒せるかもしれない!」
「溜めてきた不運?」
「今までの旅で、色んな人から少しずつ吸ってきたの!」
「それを渡すの?」
「不運で死なない程度にね!」
エデルの顔色が変わる。
「それ、使ったらどうなるの?」
「私は呪いで寿命が減るんだけど、不運を吸収してる間は、減る速度が少し遅くなってる」
「……まさか」
「吐き出したら、その分の恩恵もなくなる」
「それって」
「また普通に笑った分だけ、寿命が減りやすくなるってこと」
「いいのか? そもそもルナに残されてる寿命って…」
「いいのいいの! リスクなんて言わなくても分かってる!」
「なら――」
「でも」
ルナはユメルを見る。
「あいつが見せた夢、すっごく幸せだった」
「…………」
「だからこそ腹立ってる」
「え?」
「私が大切にしてきたものを勝手に作って」
「それを『これが幸せだろ』って押し付けられたことに」
拳を握る。
「だから行かせて」
「…………」
「お願い!」
エデルは少し迷った。
「無理はしないでね」
「うん」
「ルナが死んだら、保護者のサブローさんと、君の友達に怒られるから」
「保護者じゃない!」
「そこ?」
「あと!」
ルナが不敵に笑う。
「ユメルに近づけるような、いい感じに気合い入った絵よろしく!」
「無茶振り……!」
「いけない」
ルナは自分の口を押さえる。
「誰かのが移ったかも」
「悪いけど、無理しない範囲でよろしく!」
「ああ、もう!」
ルナは盾の陰から飛び出した。
エデルも筆を走らせる。




