↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/56

三章三話 夢を諦めない  


その日のうちに宿を確保した三人は、翌日、夢集会の受付場所を探すため広場へ向かった。


 その途中、噴水の前で一人の男が絵を描いているのをルナが見つけた。


「すいまっせーん!」


「うわっ!」


 男が驚いて振り返る。


「な、何?」


「何描いてるんですか?」


「あ、これ?」


 男は描きかけの絵を見せた。


「この街並みだよ」


「へえ〜!」


 ルナは絵へ顔を近づける。


「すっごい上手ですね!」


「へへへ。ありがとう」


「そんなに上手なら、夢は画家さんですか?」


「うーん」


 男は少し考えた。


「一応、画家ではありたいかな。依頼が来れば描いて売ってる。でも普段はリンゴ農家だよ」


「画家さんだったんですね!」


「一応ね」


「じゃあ、国一番の画家とか、コンクール優勝とか目指してるんですか!?」


「君、すごい圧で質問してくるね……」


 男は苦笑した。


「昔は、そんな夢もあったよ」


「昔?」


 ライトが首を傾げる。


「この国って『夢を叶えることが幸せ』って言われてるんじゃないの?」


「そうだね」


 男は周囲を確認し、声を落とした。


「だから大きな声では言えないけど……僕は夢を叶えられなくても、幸せにはなれると思ってる」


「…………」


「この国の『夢を叶えなきゃ幸せじゃない』みたいな空気は、あんまり好きじゃないんだ」


「そんなわけない!」


 ルナが突然声を荒げた。


「ルナ?」


「夢は叶えるから、叶うから幸せなんだよ!」


「ルナちゃん、落ち着いて」


 サブローが宥める。


 男は驚いたようにルナを見た後、静かに言った。


「君、ルナっていうんだね」


「そうだけど」


「僕はエデル・ドリームド。エデルでいいよ」


「エデルさん」


「ルナ」


 エデルは真っ直ぐ彼女を見る。


「夢を叶えることだけが人生なら、夢を諦めた人間は、その瞬間から不幸になるのかい?」


「…………」


「それに」


 エデルはライトとサブローへ目を向ける。


「夢が叶わなかったら、そこへ向かう途中で出会った二人まで、全部無価値になるのかい?」


「……!」


「そんなことないだろう?」


「知ったような口聞かないでよ!」


 ルナの表情が険しくなる。


「私から話しかけておいて悪いけど、いきなり説教みたいなこと言って!」


 ルナは吐き捨てるように続けた。


「貴方はどうせ、夢を叶えられなかったから『叶えなくても幸せ』って言い訳してるだけでしょ!」


「…………」


「ライト、サブロー! 行こ!」


 ルナは足早にその場を離れた。


「おい、待てよルナ!」


 ライトはエデルへ振り返る。


「悪いな、エデル! 普段あんな感じじゃねえんだけど!」


 そう言い残し、ルナを追う。


 サブローだけがその場へ残った。


「エデルさん。本当に申し訳ない」


「いやいや」


「こっちから話しかけたのに、勝手に怒って作業まで邪魔しちまって」


「いいんだよ」


 エデルは苦笑する。


「僕もつい言い過ぎた。大人気なかった」


 少し間を置いてから尋ねる。


「君たち、これから夢集会の受付へ行くの?」


「その予定ですけど……」


「そうか」


 エデルの表情が僅かに曇った。


「憶測で不安にさせるのも良くないんだけど……僕は、あの集会に何か裏がある気がしてならないんだ」


「裏?」


「確証はない。でも、行くなら気をつけて」


 サブローは表情を引き締めた。


「忠告、ありがとうございます」


 それから描きかけの絵へ目を向ける。


「エデルさんも、素敵な絵が完成するといいですね」


「ありがとう」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。