二章六話 普通では無い王
「やっべ! 道聞いたのに迷った!」
「何で!?」
「壁なかったら真っすぐって言ってたよな!」
「嫌な予感……」
「なら真っすぐ行けばいい!」
「ちょっとライト――」
轟音。
壁が砕けた。
「物理的に真っすぐ行くなあああ!」
マッスル・ライトニング状態のライトは、壁を破壊しながら牢へ突き進んだ。
「ミル! 助けに来たぞ!」
しかし。
「……いない?」
牢は空だった。
サブローが顔を強張らせる。
「ライト」
「何?」
「嫌な予感がする」
「俺も」
「俺を助けたせいで、あの女性の処刑を早められたかもしれない」
ルナも頷く。
「私もそう思う」
「ガッテン承知!」
ライトは再び壁をぶち抜いた。
◇
処刑場へ戻ると、獣のような姿をした女性が磔にされていた。
「ミル!」
姿が変わっていても、ライトにはすぐに分かった。
「はっはっは! やはり来たか!」
「テメー!」
「貴様らがミルも助けに来ることくらい読めていた」
ソウがサブローを見る。
「その馬鹿な中年をこちらへ渡せ」
「何?」
「そうすれば、ミルは助かるかもしれんぞ?」
サブローが小声で言う。
「ライト。奴の言う通り俺を渡せ」
「サブロー?」
「この女性は殺させられねえ」
サブローは拳を握る。
「目は見えねえが、今は磔じゃない。向こうへ行った瞬間、何とかしてやる」
ライトは笑う。
「なかなか良い気合いだ!」
「だろ?」
「でも断る!」
「何!?」
ライトはソウへ指を向ける。
「おい、王様!」
「何だ?」
「お前がミルを殺せって言い終わる前に、俺がお前をぶっ飛ばす!」
「馬鹿が」
「サブロー!」
「おう」
「ルナ連れて逃げててくれ!」
「ちょっと!」
ライトはベルトを外した。
「もちろんルナのこと守れよ!」
「任せろ!」
「我を無視するな!」
ソウが叫ぶ。
「妹よ! この哀れな者たちのために生贄とな――」
その姿が消えた。
次の瞬間、ソウの身体が吹き飛ぶ。
「だから言ったろ!」
ライトが拳を振り抜いていた。
そのままミルの処刑台を破壊する。
「ライト!」
「ミル!」
「助けてくれてありがとう!」
「礼は作戦考えたルナと、ミルの場所教えてくれた衛兵さんに言ってくれ!」
「お前には?」
「国出られたら酒と飯奢って!」
ミルが思わず笑う。
「ああ。分かった」
すぐに顔を引き締めた。
「それよりライト。私のこの姿についてだ」
「獣人?」
「能力だ。私は獣の姿へ変身できる」
「へえ」
「変身する生物によって身体能力も変わる。そして――」
ミルは倒れたソウを見る。
「ソウ兄も、似たような能力を持っている」
「え?」
ライトは首を傾げる。
「じゃあ何で、ミルは獣人だから処刑されるんだ?」
「ソウ兄は、自分の獣人化した姿を『普通ではない』と嫌っている」
「自分もなのに?」
「ああ」
ミルは苦しそうに言う。
「だから、自分が獣人になれることを知った者は殺されてきた」
「…………」
「ソウ兄の呪いは、自分が『普通ではない』と認識したものに強い殺意を抱くこと」
「なるほど」
「でも昔は違った」
ミルが俯く。
「呪いが発動しても、自分を抑えようとしていた。国民第一で、優しくて、頼れる兄だった」
ライトの頭にメモリーが浮かぶ。
「……やっぱ、お兄ちゃんってそういうもんだよな」
「話してる場合じゃない!」
ミルが我に返る。
「逃げよう! ソウ兄がまだ動けて、獣人化したら手がつけられない!」
「そうだった!」
ライトが振り返る。
「よし、国の外――」
次の瞬間、ライトの身体が消えた。
「ライト!?」
轟音。
遠くの壁が砕ける。
ライトが吹き飛ばされたのだ。
そこには、人型の巨大な恐竜のような怪物が立っていた。
ソウ。
「……俺の姿を見たな?」
低い声。
「国民も」
衛兵を見る。
「兵も」
ミルを見る。
「この場にいる奴ら……全員殺す!」




