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一章六話 筋肉に嘘はない

 ルナは簡単な変装をし、中心街へ向かう。


 案の定。


「この国の王よおおおお! 俺の話を聞いてくれええええ!」


 城門の前でライトが叫んでいた。


「お前の方こそしつこい! 無理だと言っているだろう!」


「お願いします!」


「他の兵も呼べ!」


 ライトは衛兵たちに囲まれる。


 その中には――門番の男もいた。


「あ」


 ライトと守備兵長の目が合う。


 ライトの顔には、はっきりと書いてあった。


――あ、やっべ。


 守備兵長も天を仰いだ。


――マジか、こいつ。


 一人の衛兵がライトへ怒鳴る。


「そもそも貴様はこの国の人間ではないだろう! 通行証を見せろ! 発行者を確認する!」


「これ?」


 ライトが紙を取り出す。


「そうだ! 渡せ!」


「これって紙でできてる?」


「エリシア王国名産の特殊紙だ! なぜそんなことを――」


 ライトは紙を丸めた。


 口へ入れる。


 ごくん。


「…………」


「…………」


「…………」


「な、何をしているうううう!?」


「食った」


「見れば分かる! 通行証を持たない者は身元不明者として拘束対象だぞ!」


「それでいい」


 ライトの表情が真剣になる。


「俺が拘束されるのは構わない。でも、この国で幸せを探したいって言った子どもがいるんだ」


 兵たちが黙る。


「どうか、幸せを探して前へ進もうとすることに罰を与えないでほしい」


 ライトは頭を下げた。


「俺じゃ王に会えないなら、衛兵の人から伝えてほしい。お願いします!」


 しばらく沈黙が続いた。


 やがて、守備兵長が口を開く。


「……お前の熱意は分かった」


 ライトが顔を上げる。


「だがな。ここ数年、国王は突然変わられた。幸せだの夢だの、そういうことを口にした者は投獄。酷い場合は処刑だ」


「…………」


「俺たちが上官へ頼み、その上官が王へ進言してくれる奇跡が起きたとしても……進言した者ごと殺される」


「そんなに?」


「ああ。昔は違った」


 兵長は歯を噛み締める。


「昔の王は、本気で国民の幸せを願っていたんだ。故に国民も俺達兵士も国王を慕っていた。」


「守備兵長!」


 別の兵が止める。


「外部の者にそんなことを話してはいけません! 誰かに知られれば、兵長の首が飛びます!」


「兵長だの門番だの、今はどうでもいい!」


 男は怒鳴った。


「お前らだって、この国の民を守りたくて兵になったんだろうが!」


 衛兵たちが俯く。


「王が変わられてから、俺たちは自分の身を守ることばかり考えてきた。なのに、この国と何の関係もない若造が、この国の子どもの未来のために頭を下げてるんだぞ!」


 ライトを見る。


「ここでこいつを捕まえて処刑台へ送る。それがお前らがなりたかった兵士か?」


 誰も答えなかった。


 ライトは顔を上げた。


「さっきから聞いてれば、俺が殺される心配してんのか?」


「ああ」


「だったら大丈夫」


「なぜだ?」


 ライトは笑った。


「俺も幸せを探して絶賛前進中だからな!」


 胸を張る。


「見つけるまで死なないって決めてる!」


 そして右手を空へ掲げた。


「それに――戦っていいなら、俺は強いぞ!」


「何をするつもりだ……」


「筋肉雷――マッスル・ライトニング!」


 天空から雷が落ちる。


 ライトの全身を電流が覆った。


「行くぞ!ヴォルケニア式武術三式!!!」


 次の瞬間。


 複数の衛兵が地面へ倒れていた。


 全員、気絶しているだけだった。


 ライトが攻撃しなかった為、唯一立っている守備兵長へ、ライトが尋ねる。


「とりあえず、王様の所に行って、やるだけやってみていいか?」


 兵長は苦笑した。


「……俺の能力が言ってるよ」


「何て?」


「お前の自信と筋肉に、嘘はないってな」


「筋肉の真偽まで分かるの!?」


「知らん。勢いで言った」


「おっさん!」


 兵長は少し笑う。


「ここまで来たら、後はなるようになるしかない。俺と同じ考えの兵や役人には、できる限り話を通す」


「助かる!」


「だが、王を守ろうとする兵は必ずいる」


「分かってる」


「頼む。そいつらも殺さないでくれ」


「王も兵も殺さねえよ」


 ライトは拳を差し出した。


「約束だ!」


 兵長はその拳へ自分の拳を合わせた。


「……ありがとな」


「ちょっとおおおお!」


 ルナが走ってくる。


「何これ!? 何で衛兵が倒れてるの!? 昨日も思ってたけど、その雷何!? これから何する気なの!?」


「時間ないから、王のところ行きながら話す!」


「嫌な予感しかしない!」


「背中乗って!」


「何で!?」


 ライトはルナを背負うと、持っていた縄で身体を固定した。


「ちょっと! 時間ないんじゃないの!?」


「舌噛むから、慣れるまでは話すなよ!」


「え?」


「しっかり捕まってろ!」


 地面が弾けた。


「ぎゃああああああ!」


 二人は城内へ突入した。


「俺の能力は、幸せな記憶や感情を雷に変える!」


「はああああ!?」


「自分に雷を落とせば身体能力も上げられる! ただし、能力を使うために頭に浮かべた記憶は消える!」


「さらっととんでもないこと言ったあああ!」


「詳しい説明は後!」


「結局、武力行使で解決するの!?」


「違う! まずお願いする!」


「その後は!?」


「気合いと根性!」


「無鉄砲すぎいいいい!」


 途中で襲いかかってきた衛兵たちを、一撃で気絶させながら進む。


 そして、マッスル・ライトニングの残り時間が五分ほどになった頃。


 二人は王の間へ到着した。


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