↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/56

一章五話 笑わない少女

 三人は中心街から離れた場所にあるリリーの家まで逃げた。


 周囲に追っ手がいないことを確認する。


 女性がライトへ頭を下げた。


「名前も知らないマッチョさん、本当にありがとう! 私、ルナ・ナイト・メアル! ルナって呼んで!」


「俺はライト・ザック・バーナル! ライトでいいぞ!」


「あたしはリリー・フロスティ! 九歳! リリーって呼んでねでし!」


「ライトとリリーちゃんね! よろしく!」


 ルナの声は明るい。


 身振り手振りも大きい。


 しかし――表情だけが全く動いていなかった。


「ルナは何で追われてたんだ?」


「私は幸せになるために、自分の呪いを解きたいの」


「呪いを?」


「神託の内容からして、たぶん『真実の愛』ってやつを知る必要があると思っててさ。だから色んな国を旅して、私に真実の愛を教えてくれる伴侶を探してるってわけ!」


 やはり声は異様なほど明るい。


 でも真顔。


「ほーなるほど」


 ライトは腕を組む。


「肉食清楚系パッションガールって感じだな」


「何それ?」


「ヴォルケニア島で使ってた褒め言葉みたいなもんだ。明るくて、勢いがあって、綺麗で可愛い女性を指す!」


「そりゃどうも」


「たださ」


「何?」


「笑った方がもっと可愛いんじゃないか? その方が伴侶も見つかりやすそうだし」


「あー」


 ルナは軽い調子で答えた。


「私の呪い、笑うと寿命が減るの」


「…………」


「糞みたいな呪いでしょ? 今も心の中ではニッコニコで二人と話してるつもりなんだけどね」


「……悪い」


「いいっていいって!」


「でも、笑わなくても十分モテそうな顔してるし、真実の愛ってのを見つけて、いつか呪い解けるといいな!」


「ありがと」


 ルナはライトをじっと見る。


「ねえ、どう? ライト君、私と一旦付き合ってみたりする?」


「それはハレンチだあああああ!」


 ライトの顔が真っ赤になる。


「良くない! 非常に良くなあああい! 付き合うなら、お互いもっと深く知ってからだ!」


「うわ。めっちゃ暑苦しい……」


「何!?」


「やっぱ無しかも…」


「判断早すぎない!?」


「デーシッシッシッシッ!」


 リリーが笑った。


「リリーちゃん、笑い方かわいいねえ」


 ルナはリリーの頭を撫でる。


「それとね。さっきの大人たちは、幸せなんて知る必要がないって言ってたけど、そんなことないからね」


「そうなの?」


「他の国でそんなこと言われたことないよ。そもそも、人は幸せになるために生きたっていいんだから」


 リリーの目が輝いた。


「あたしも、幸せになっていいでし!?」


「もちろん」


「じゃあ、あたしも幸せって何か知りたいでし!」


 その言葉を聞いたライトは、ダンベル村を思い出した。


 フィーナ。


 村のみんな。


 自分は幸せを探す旅へ出る前に、大切なものをたくさん受け取った。


 なら、リリーにもその自由があっていいとライトは思った。


「うっし!」


「何?」


「この国でも、自由に幸せを探せるようにするか!」


「は?」


「ちょっと待ってろ、リリー!」


 ルナが嫌な予感を覚えた顔で尋ねる。


「……どうするつもり?」


「とりあえず、王様にお願いしてみる」


「は?」


「守備兵長って肩書きのおっさんもいい人だったし。まず話してみる!」


「無理に決まってるじゃない!」


「できる!」


 ライトはその場で腕立て伏せを始めた。


「気合い! 努力! 根性! フン! フン! フン! フン!」


「馬鹿らしい……」


 ルナはため息を吐いた。


「とりあえず、助けてくれたことは本当にありがとう。またどこかで会えたらよろしくね」


 立ち去ろうとする。


 その袖を、リリーがそっと掴んだ。


「ルナちゃん……もう少し一緒にいてほしいでし……」


「…………」


 その瞬間。


 ルナの頭の中へ、直接感情が流れ込んできた。


――寂しい。


――また一人になる。


――嫌だ。


――もっと一緒にいたい。


 ルナは一瞬、警戒する。


 精神支配系の能力か。


 しかし、リリーを見る。


 少女は俯き、涙を必死に堪えていた。


「あー……」


 ルナは頭を掻いた。


「用事思い出しちゃった」


「?」


「街には戻れないし、しばらくリリーちゃんの家に泊まってもいい?」


 リリーの顔がぱっと明るくなる。


「うん! いいよ! 嬉しいでし!」


 リリーの能力は、触れた相手へ自分の感情を共有すること。


 言葉にできない感情を、相手へ届けられる能力だった。


「フン! フン! フン!」


 見ると、ライトはスクワットへ移行していた。


「リリーちゃん。あの筋肉は放っておいて家で遊びましょ」


「うん! ライトも休憩中は遊びに来てね!」


「おう! インターバル中は行く!」


「フン! フン! フン!」


     ◇


 翌朝。


 ルナが目を覚ますと、ライトの姿がなかった。


「……あの筋肉、どこ行った?」


 隣ではリリーがまだ眠っている。


 外へ出る。


 遠く、城のある中心街から騒ぎ声が聞こえてきた。


「…………」


 ルナは嫌な予感しかしなかった。


「絶対あいつだ……」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。