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覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
四章、悲しい過去
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結末


 ピン…… と私の体全身に何かが走る感覚がした。


「………?」


「メリル君、こっちは終わったから何かあったらサポート宜しく」


「は、はい!」


 いけない。今はこちらが押しているようだけど元々罠にハマった形なのだから余計な事を考えていられない。


「クワトロスラッシュ!」


 巨大化したミューズの背を走り抜け、ターニャが振るった一振りは4つの軌道を作り壁へ押し付けられている骨の竜を切り裂く。


 ターニャが大きく跳躍し魔力の翼で飛行し始めたと同時に骨の竜が斬撃と同じ色に輝きだし砂となって消えてしまった。


「聖剣だと!?」


 ターニャの剣を信じられないと言いたげに凝視するネームレス。

 その気持ち良く分かります。


 ここまで強力な聖剣となったらもう神話に出てくるような聖剣しかありませんからね。

 聖職者が聖水振り掛けて祈っただけの代物とは訳が違います。


 その動揺は事態が更に変化しようと続く。


 ミューズが別の竜を捕まえるまでの間にターニャが更に一匹消し去り、捕まえた竜もキチンと消し去る。


 数十秒でこれだけ状況が変化した。


「ふざけるな………フザケルナァッ!!!」


 そしてようやく復帰したが……


「余所見とは余裕があるね」


 既にターニャは急速転回で背後へ回り込み剣を構えて突撃している場面。


「ッ!?」


 このまま切り裂いて終わりかと思った時、ネームレスの首が180度回り、ターニャと目が合った。

 それくらいでなければ有り得ない程の硬直がターニャにでき、


「エナジーバーストォッ!!!」


「ぐっ」


 放たれた魔力の突風にあおられターニャが天高く巻き上げられる。


「死ね」


 ネームレスがミューズへ手を向け、そして………………





『素晴らしい……………』





 …………セリスの声?


「………?」


「メリル君、こっちは終わったから何かあったらサポート宜しく」


「は、はい!」


 ………あれ?

 この会話今さっきしたばかり………?


「クワトロスラッシュ!」


 骨の竜がターニャの攻撃で砂に変わる……これって………


「まさか……」


 それに思い至った瞬間、私は魔力結界を飛び出した。

 結界内の皆が私を呼ぶ声が聞こえ、そして………


 目の前に迫る黒い獣の大群。


 ここでようやく自分がどれだけ馬鹿な真似をしたか気が付いた。

 私には真正面から仮初めの魔王と戦えるだけの力は無い。


『戦う必要など無い。ただ殺せば良い』


 眼が燃えるように熱い。

 眼へと魔力が集まり、私の見る世界が真っ白なキャンパスに黒い線のみで描かれたように変わる。


 そして、その世界に描かれる生き物には例外無く黒い炎を胸に宿していた。


『それを消し去ってしまえ。メリルにならできる』


 そんな中、確かにそう聞こえた。

 私は混乱する思考とは裏腹に心のどこかでその声を、セリスの声を信頼し無意識に行動していた。


 私が解き放った魔力は仮初めの魔王の体をすり抜け、胸の中にある黒い炎を鷲掴み、消し去った。


「メリル様!!………え?」


 私の行動に気付いたミューズが元の大きさに戻り、捕まえていた骨の竜を踏み台にして私へと近付いてくれた。


 ミューズの方を向く頃には視界は元に戻っており、同時に背後で沢山の何かが崩れ落ちるような音がした。


「エナジーバーストォッ!!!」


 ターニャが空へ吹き飛ばされる。


 ミューズが驚いた様子で私を見ているようだけど、間に合って良かった、本当に、良かった。


「死ね」


 ミューズの肩に触れ庇うように前に出て、私とネームレスが手を向けるのはほぼ同時。


「馬鹿な!?ドリーミーが魔力遮断結界だと!?」


 そう、魔力遮断結界。

 この魔法の名前、私知らないんですよね。

 ほんのちょっとセリスが使っていたのを見ただけですので。


 私を中心に光の結界が展開される


 完全に光の外の魔力が遮断され、ネームレスが放った魔力が霧散するのを見て私は笑みを浮かべる。


 けれど、このダンジョン内に入ってから感じていたねっとりとした気持ち悪さも何も感じなくなってしまいました。


 私の体がグイッと引っ張られたのは理解できます。そして視界がぐらりと回ると言いますか……倒れそうになったのでしょう。


「メリル様!」


 ミューズが私に大声で呼びかけ、眼に写る光景では確かにミューズが私を支えてくれている。


 なのに私はミューズに触れられている感覚がまるで無い。


 耳に入るミューズの声は目の前から聞こえているのだろうと写る光景から認識できますが、感覚としてはどこから呼ばれたのかわからない。


 方向感覚がまるでわからない。


『左右どちらを向こうとしていた』事が分からなくなるとかそんな生易しいものでなく上下の方向感覚も分からず自分の重心を見失い自力で立ていることもままならない。


 確かに……これはミィさんどころか、敵であるはずのネームレスが驚愕したのも納得できる。


 こんな状態、ちょっと背中を押されても気づく事無く頭部を強打して死んでしまうでしょうね。


「そのまま……支えてください……………」


 頭がボーッとする。


 そんな状態でも私は魔力を流す事だけは止めなかった。

 一度発動すれば魔力さえ途切れなければ魔法は発動し続ける。


 もう少しだけ……


 この戦いが終わるほんの少しだけ持てば良い………


 だから……ほんの少しだけ…………


「もういいよ、メリル」


「セリ……ス…………?」


 セリスの声が聞こえ、結界を消した。


「メリル様!メリル様ぁ!!!」


 途端に聞こえてきたのは洞窟内全体に響きそうな程の涙混じりのミューズ大声。

 そして羽が感じ取った魔力は戸惑い、混乱………こんなに取り乱れた感情を私は感じたことは一度だってない。

 いったいどれ程心配かけてしまったのでしょう。


「大丈夫ですよ、ミューズ」


「メ……メリル様ぁ…………ああぁあああああー!!!」


 大丈夫だと伝えたのに感情が爆発して大泣きしはじめてしまいました。

 あぁもう。セリスもだけど私の周りには泣き虫さんが多い気がします。


「はいはい、私はここにいますよ」


 ミューズに抱き付き、ポンポンと背中を撫でながらセリスの顔を見る。


「セリス遅すぎですよ。てっきりもっとちゃんと守ってくれると思ってました、バカ」


「覚醒がもうすぐだからね、経験を積んでほしかったんだけど今回は私の見通しが甘かったよ、ごめんね」


 覚醒……覚醒かぁ………

 なんか話を聞く限り私の今後一生に関わってきそうな話ですし、覚醒というのがより良い方向へ向いてくれるなら仕方ないのかな?


「まぁ……良いです。…………終わったんですよね?ネームレスは?」


「逃げたよ」


「え?」


「初めからミィに譲るって約束だからね、もう終わるよ」


 空洞の方を向きながらそう発言するセリスからは心配なんて微塵も感じられない。


「そっか……」


 なら私も余計な心配は止めましょう。



 ・



 ダンジョンの通路、手頃な岩に座り眼を閉じている。


「メイルシュトローム……一瞬とはいえ凄いなぁ」


 私の視界にはセリスの眼を借りて戦いの光景が写っている。


 ミカエルの活躍にも驚きだ。

 こんなにも戦えたんだな……って、私としか戦わないからな、負け癖が付くのも当然か。

 処理できない分は遠くへ吹き飛ばし確実に戦えている。

 ミカエルが居なかったら全滅だな。


 ターニャも凄い。

 あの場所はこの世界にとって間違い無く上位の強さの存在が集まっている。


 ………って、ええ?

 メリルが魔眼を開放して魂握り潰しちゃったよ。

 それもセリスよりずっと最小限に魔力を抑え確実に。

 もう普通の行商人なんて名乗れないねあれ。

 まるでセリスの世界の行商人のようだ。


 あ……ターニャがふっ飛んだ。

 いい加減助けに出てあげないと取り返しのつかないことに………

 まだ出ないのって……


「ハァ!?」


 おいおいおいおい、マジックアウトをドリーミーが使うって自殺行為!!!

 助けろ!すぐ助けろ動けセリス!!!


「ッ!?…………………」


 つい熱くなり立ち上がっていた私はある言葉を聞き腰を落とし、悲しいような複雑な気持ちになった。


 メリルは大丈夫そうだしそれはもういい。


 天から彗星のように降ってきたターニャの突きが命中する。

 手で防ぎ貫かれ肘の辺りまで剣が入り綺麗に割けているがそこまで。

 浄化の光とアンデッド特有の死霊系の力が押し合い…………


『何故………』


 そんな中、呟かれた言葉………


『何故……私達の時に現れてくれなかった………勇者よ……………』


 勇者………ハハ、確かに………私より勇者らしいよ、ターニャは。

 ハハハ………そうだね、まるでおとぎ話に出てくる勇者のようだ。

 聖剣の持ち主である勇者が沢山の種族と…………


『まだだ!まだ終われない!』


『させん!』


 光の侵食が勝っていると見切りを付け肩から先を切り落とし背後に飛べばミカエルとターニャで挟み撃ちにされる。


 けど……この辺はやっぱり同格相手との戦闘不足だね。

 二人揃って幻影と……不要と切り捨てた腕を切り裂くだけの結果となった。

 少し前まで浄化されまいと力を込めていた腕だ。

 本体よりよっぽど表に出ている力の密度が高い。

 だからこそ幻影とそれを重ねるのは効果的。

 二人して目の前の勝利に飛び付いた結果かなりの距離を取らせてしまう。


『くっ、待て!……ッ!?』


 実際に場所が見えているんだ。

 このままじゃ追い付きそうだからね、氷の壁を作って足を止めさせてもらったよ。


 二人とも悪いね、ここから先は私の番。


 出会ったらどうしようか……

 謝罪するべきだろうか?

 それともこんな馬鹿な真似をしていた事を叱るべきだろうか?


 私にそんな資格があるのだろうか………


 しかし、会わない等という選択肢は無い………


 物事をあまり深く考えない私にしては深く、深く考えた…………


 足音が大きくなってくる……

 予想通り……その分かれ道をそのまま進めば………


「やっぱり来たね、セン………」


「………ミューズ…………いや……ミィ姉…………?

 いや……有り得ない………そんな筈がない……………」


 セリスの眼を借りていた時は綺麗だった顔の皮膚の一部が剥がれヒビ割れているが辛うじてセンだと分かる。

 私は立ち上がり、近づきながら口を開く。


「ん、久しぶり。

 ここさ……私達の故郷とまるっきり同じだよね。

 だからセンならここを通るって分かった。

 昔と同じで泉に潜ろうと考えていたんでしょ?」


 この先に泉があって、そこを潜ると複数の別の場所へ出られる。


「……本当に…………ミィ姉…………………?」


「センは昔から臆病で運動が苦手だったけど皆より物事を考えるのが得意でさ、魔法が私の次に得意だったよね。

 ホムンクルスを作ったり、そんな事できるのセンしか思い付かなかった」


 呪い魔法の中でも付与魔法が特に得意だったからね。

 錬金術で多用するのは付与魔法なのだからそうとしか思えない。


「………見るな…………こんな私を見るな……………」


「……何故?」


「私は………もうスカーレットミーティアではない……………」


「…………はぁ?」


 パシンと叩いた。


 ……………ハッ!


「わ、悪い!ついいつもの………って、ああもう!

 こんなの私らしくない……セン!

 お前さ、本当に馬鹿だよなぁ。

 スカーレットミーティアだろうがリッチだろうがセンはセンなんだろ?じゃあそれが全てで皆そう言う。

 そんな事考えるのはセンくらいしか居ないって」


 まぁ………だからこそ生き延びた先でアンデッド化してまで復讐しようだなんて考えていたんだろうけどさ。


「ミィ姉ならそう言うだろうね……本当にミィ姉…………?」


「他に何に見えるんだ?言ってみ?」


「…………ミィ姉にしか見えない」


「ん、なら良し」


「………………何が良しなの?

 皆……みんな…………カムさんも、ディーの兄貴も、カイトさんも………ウィル、ケイ、ルー、ユア、ヘレン……」


 皆の名前……言いたい事は分かる……けれど…………


「黙れ」


「ッ!?」


「皆がどんな死に様だったかどうかなんて私は見てないから知らない。

 だからあまり口出しできないけどさ、これだけは言える。

 皆を理由にしてその生き様を侮辱するな!

 掟やらなんやらあったのは確かだけど絶対じゃない!

 それを決めたのは自分自身であって結果そうなった!

 その光景を見て悲しいとか悔しいとか思うのは勝手だけど皆が決めて終わった事を理由にして復讐なんて馬鹿にするのもいい加減にしろ!」


 ……………あ。


 ………………………………………やっちゃった。


 いや……だがこれは言うべき。

 これくらいでないと理屈屋なセンには伝わらない。


「あ~……まあ、初めは悔しくてここまでやった。

 けれど………センさ。お前もうそんなに怒ってないだろ?」


「…………何故?」


「分かるって」


 勇者……いや、魔王の力はそういった気持ちに敏感だからね。

 まあそんなモノ無くても気付いただろうけど。

 私も同じだから。


「長い時間で復讐云々よりも研究が楽しいって気持ちの方が先に来るようになってさ、その気持ちを皆の為だって無理矢理抑え込んでさ………

 時間による安らぎって言うの?

 沢山の時間の中で何か切っ掛けがあるとそっちに傾いてさ。

 皆は理由も目的も感情も全部一致して戦いたいという意思で戦って死んだろうけれどさ、センは心の中では研究の方が楽しいって思うようになっているんだろ?

 なのにセンはそれを無理矢理抑え込んでさ、『したい』ではなく、『しなくてはならない』って決めつけて行動している。

 それが皆に失礼だから叱ったんだよ」


 皆と同じように真剣なのかもしれない。

 けれどそれでも、本当の気持ちを理由付けで抑え込んで戦うなんて事を皆はやってなかったと思うんだよね。

 それなのにそれって失礼でしょ。


「もし死後の世界があって皆に会えるんだったらさ、自分のやりたいことをやって死んだって言えた方が良いだろ?」


 だから私はめいいっぱい好きなことをして生きると決めた。

 それの合間に皆の弔いをすれば良い。

 私はそう考えている。


「………………そっか……それで良いんだ………」


「うん、それで良いと思うぞ」


「はは……軽いなぁ………」


「かるっ………お前なぁ。

 軽いと思うのはお前が重く受け止めすぎてただけで私だって重く感じてるってば。

 でなきゃお墓立てたりなんてしないって」


「お墓立てたんだ」


「地形が変わってたから確証持てなかったけど、故郷があっただろう場所に石の祭壇を立てたよ。

 皆の毛皮とかを燃やしてそこに撒いたし月1で花を手向けに行ってるぞ」


「そっか………ねえ、ミィ姉。

 実は今ね、研究でイデアの事をいろいろ調べてみたいと考えてたんだ」


「イデアねぇ……イデアに干渉して生き返ったりするのか?」


「ハハ、それは無理だよ。アンデッドがイデアに干渉してドラゴンとかになったらドラゴンゾンビとかにしかなれないから」


「へぇ~……じゃあ死んだ肉体を蘇生させる事はやっぱりできないのか」


「そうだね。それでさ……別にイデアに干渉するんじゃなくて、イデアに干渉させる事ができそうだというのが長年の研究過程で見つかったんだ。

 目的の優先順位として触れてこなかったけど、とても興味深くてさ」


「ん~?イデアを干渉させる?それってどう違う………っておい」


 センの体がゆっくりとだが崩れていっている………


「ハハ、全然違うよ。自分にするのと別の何かにやるの違いだよ?ほら、全然違うでしょう?

 それで……イデアに干渉す……るのは………可能性に干渉する事な…………んだと私はお……もっている…………も……し…………私の考え通りな……ら………可能性せ………か………………………」


 センの魂がキラキラと眩しいほどの光を発しながら小くなっていき、とうとう消えてしまった。そしてセンは砂となり崩れ去った。


「満足したのかな…………

 全く、皆に失礼って言ったけどさ、私のクローン勝手に量産してくれちゃってさぁ……

 1番私に失礼だろバーカ……って思わないかな二人とも?」


 二人に声かけたら素直に出てきたよ。

 なぁ~に気まずそうに出てきてるんだか。

 ターニャもミカエルも自分の実力ごときでこのミィさんを誤魔化せると本気で思っていたのか?


「ミィ、その墓に私を連れてってもらえないだろうか」


「ん~?………そうだね。別に良いぞ。

 センも連れて帰してやらないといけないし」


「そうか………別に、泣いたところで笑う者など居ないぞ」


「…………じゃあ、少しだけ胸を借りても良い?」


「あぁ……」


 声を圧し殺しほんの少しだけ私は泣いた。

 泣いても心のどこかにぽっかりと小さな穴が空いてしまったような感じが拭えない。

 けれどもセンは最後に笑いながら、楽しそうに旅立った。

 なら、それで良いだろう。



 ・



 ミィさん達が戻ってきた。


 話によればネームレスをどうにかしたらしく無事に解決らしいです。

 しかしどうしたかの内容をミィさんは話そうとしません。


「二人も見てたからそっちに聞いてくれ」


 と言うばかりで、ミカエルさんもターニャもミィさんが話さないなら話さないという事でした。

 けっきょく詳しくは分からないまま解決となり、地上へ戻る事へなりました。


 その途中で気付いた事なのですが………


「あ……そういえばミューズはセリスの事が怖くないの?」


「へ?」


「へ?って何かなへ?って」


 私はまだ方向感覚を回復していなくて上手く歩けないでいます。

 なのでセリスにおぶってもらっているのですが、その隣をミューズがあまりにも楽しそうに歩いているもので気付くのが遅れてしまいました。


 あれだけボコボコにされて強力な殺気浴びておいて怖くない訳がないじゃないですか。


「ほら、仕方なかったといえセリスに蹴られたり痛い思いしたし」


「え?ん~…………?どう見ても別人じゃないの?匂いも違うし」


「え?」


 いやいや、確かに覇王セリスは凍りついた美しい人形のようでセリスの見せる猫のような笑みをする感じじゃありませんけど瓜二つです。


「スカーレットミーティアは顔よりも魂を見て判断するって聞いたことあるよ。だよねミィ」


「基本的にそうだね、特に子供はその傾向が強いぞ?」


「そうなんですか?」


 ミィさんが言うならきっとそうなんでしょう。

 ミューズはまだ1歳ですし。


 あとさっきセリスに聞かされたのですが、ミューズの名前の由来はミィ→ミュ→ミョらしくて、ミィさんの代わりになる存在達となるのでミューズ01~できた数までの番号で名付けられる予定だったそうです。


 ミューズがミィさんの代わりかぁ……

 見た目こそ瓜二つですが全くの別人ですし、ミィさんからはどことなくカリスマ性も感じるんですよね、器が大きいというか何て言うか……もう根っ子のところから全部違うってくらいには違うし。

 それに、ミィさんがミューズに「もしかして先代勇者様ですか?」と聞かれて「いいえ、人違いです」を真っ直ぐ鵜呑みにして興味を無くす辺りもミィさんとは程遠いというか………


「………って、それこそセリスは根っ子のところは同じじゃないですか」


「メリル、それ何の話?」


「セリスの杖から出てきたセリスがミューズをこれでもかと痛め付けたんだけどセリスの魂と同一のものでしたって話です」


「あ~……残念だがドリーミー程奥深くまでは見通せないからな~」


「なるほど……」


 まああの時の私みたいにじっくりと見たりしてませんよね。

 最初私だって別人かと勘違いするくらいでしたし。


「………ところでメリル、私もミューズと同じくらい砕けた口調で話してくれても良いんだよ?」


「え……それは…………」


「……駄目?」


「……うん、良いよ。だからそんな不安そうにしないで、私が辛い」


「うん、ありがとう」


 セリスの少しズルいやり口に対して、回している手に力を込めてギュッと力一杯抱き締めて答える。

 丁度その時の事です。


『次のところ右曲がってすぐの部屋だよ~』


「ふう、やっと転移できる場所に着くんだね」


「な~んだ、メリル様知ってたの?」


「ん?えぇ?」


「次のところ右曲がってすぐの部屋だよ~」


 ミューズがさっき言った事と同じ仕草で同じ事を言う。

 ……まあ、油断してると同じ言葉を繰り返し口に出してしまうのは良くあることですしね。



 ・



 転移魔法により外へ出る。

 外はもうすっかり夕焼けで、森に入る前に集合写真を撮った草原にポツリポツリと立つ木が大きな影を作っている。


「ん……んん~~~~……………ふぅ」


 転移までの間、けっこうな時間セリスに背負ってもらっていたので下ろしてもらい私は大きく伸びをしてお腹いっぱい空気を吸い、吐く。


「………………」


 そしてすぐ側のミューズが口をポカンと開けてたたずんでいるのに気が付く。


「ミューズ?………ミューズ?……ねえミューズ?」


「……えっ?あ、どうしたの?メリル様?」


 あまりにボーッとしていたから呼んでみたものの、何て聞きましょうかね?

 何故ボーッとしていたかの理由は分かっていますし、これは満足するまで呼ばない方が良かったかもしれませんね。


「う~ん………気に入ったかな?」


「あ、うん………なんか…………すごく広いね。

 広くて、大きくて、綺麗で……………どうしたら良いんだろう?

 ほんの少しだけ……怖いのかな?よく分かんない」


 てっきり「凄い!」とか言いながらどっか走り出すのかと思っていました。

 私が初めて少し大きめな村に行った時には都会だとか言って物凄くはしゃいだ記憶があるのに………ああいうのを若気の至りって言うんでしょうね。

 今も十分若いですけど。


「そっか………怖いなら手でも握ろっか?」


「え?……なんで?」


「怖い時に誰か親しい人と手を握ると安心できるものだから」


「そっか………」


 私の言葉を素直に聞き入れ両手でギュッと包むように握ってくる。

 触れた事で分かりましたけど、確かにミューズは小さな恐怖を感じていて、それ以上にこれから先に起こるだろう何かに対する期待がとても大きいようで、その気持ちが何なのかミューズ自身分かっていないようです。


「……どうやらセリス達の話は終わったみたいだね。

 私達も挨拶しに行きましょう」


「うん」


 私とミューズも簡単に挨拶を済ませ、ミィさんを含めた学生さん達が転移魔法で送還される姿を見送りました。


 こうしてやたらと長い1日はようやく終わりました。


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