連続する空間
「・・・と、いうことだ。お前らはこのまま大人しく拘束されろ。な?手荒な真似はしたくねぇ。」
まさか、霊がこんなぶっ飛んだ能力を持っているとは。先ほどの怨霊さんの超ポルターガイストも凄かったが、『かよっち』と呼ばれるこの霊の空間支配はまた別の次元の能力だ。
「わ、私の『連続する空間』からは逃げられませんっ!!」
師匠の後ろに隠れながらも、自信満々のかよっち。
「あれ、かよっち?いつからそんな技名っぽいの付けたんだ?」
「・・・いっ、今です。ごめんなさい、ちょっと言ってみたかっただけなので忘れてくださいっ。」
「いや、かっけーじゃねぇか。俺は好きだぜ。さすが俺のかよっちだ。」
「えへへ・・・」
この状況で、イチャイチャしだす二人。かよっちは余程この能力に自信があるのだろう、それにヌイに師匠と呼ばれていたこの男も、いくつもの修羅場を潜ってきたような雰囲気がある。(気がする)
「クソ、このまま捕まっちまうのか。本当にこの空間は無限に続いてるのか?」
一応幽霊たちに聞いてみる。
「残念ながら、それはもう身をもって検証済みよ・・・ね、悪霊。」
「はい・・・ご主人さまが帰ってくるまでの間、私と幽霊さんの二人で脱出できないかマラソンしてみましたが・・ただ疲れただけだったのです。玄関以外のベランダの窓なども一通り試しましたが・・・」
「結果は同じ。どこを開けても部屋が続くのよね・・・。」
「万事休すか・・・こうなったら、怨霊さんの超ポルターガイストで何とかしてもらうしかないか・・俺の部屋がめちゃくちゃになりそうだが。」
「ちょうぽるたー??何それ。怨霊さんそんなこと出来るの?」
信じてなさそうな顔をする幽霊
「まぁ、見てろ。怨霊さんっ、さっきみたいに派手にやっちゃってください!!・・・あれ?」
「ふにゃふにゃ・・・もう飲めないよぉ・・・スースー・・」
見事に熟睡してらっしゃる。さっきから妙に静かだなと思ってたけど、こういうことか。
「おーい、作戦会議はもう終わったかー?」
今度こそ捕まる時が来てしまったか。幽霊と悪霊は特殊な能力なんか持ってないし、怨霊さんはこの有様ではどうしようもない。ましてや一般人の俺がどうこう出来るような相手ではないだろう・・・。
「分かった。降参だ。」
「ちょっ、こういう時は『俺は大人しく捕まるから、幽霊たちは逃がしてやってくれ。』とか頼むのが普通じゃない!?」
すかさず幽霊が文句を挟む
「ふふふ・・・そんなセリフこの俺が言うと思ったか?こうなったらとことんお前らと一緒だ。」
「この悪霊、どこまでもご主人さまに憑いていきますっ!!」
「いや、どこまでもはやめてくれ。」
不貞腐れる幽霊と、変なスイッチが入ってテンションが上がってる悪霊。
「よし。まぁ始めっから俺らに捕まるしか道はなかったんだがな。かよっち、もう解除していいぞ。おっと、その前にヌイを呼ばないと。アイツの鎖でこいつらを縛らないといけねぇ。」
携帯を操作してヌイを呼び出す師匠。どうやら、かよっちの能力はあくまで俺たちをこの空間に閉じ込めるだけであって、外に連れ出すにはヌイの鎖で縛る必要があるらしい。かよっちの能力で相手の戦意を失わせ、そこをヌイの鎖で拘束するのがこいつらの戦闘スタイルらしい。
「・・・あれっ、あれれ??」
後ろで、急に焦りだすかよっち。
「ん?どうした、かよっち?」
「い、いえ・・・ヌイさんが入ってこれるように空間支配の出力を下げようとしたのですが・・・下げられません。なぜか力がどんどん溢れてきちゃいますっ!!」
「かよっち・・・それは・・・つまり、どういう・・・?」
「・・・能力を解除できません。私たちも閉じ込められました。」