師匠とかよっち
フラフラの怨霊さんをなんとか支えながら、アパートの階段を上る。
「ハァ・・・ハァ・・・ちょっと怨霊さん、ちゃんと歩いてくださいよ。もしくは、実体化を解除してください・・・。」
「うぅーん・・・酔っぱらっちゃったら、力が湧き出て来て制御出来ないのぉー。えへへ。」
「この酔っ払いがー・・・」
それにしても今日は本当に厄日だ。変なロリと化け犬に襲われ、挙句の果てには酔っ払いの介護とは。家に帰ったら速攻で寝よう。そして明日の朝一番でこの酔っ払いをどこかに捨ててこよう。今後の予定を決めたところで、部屋の前にたどり着く。外では、先ほど怨霊さんが暴れたせいで住民が外に出てきているようだ。早く部屋に入らなければ。怪しまれたらたまったもんじゃない。
ガチャ
「ただいまー・・・」
「入ってきちゃだめえええええええええええっ!!!」
ドアを開けた瞬間、叫び声に出迎えられる。幽霊の声だ。
「うるさいな、どうしたんだよ。それよりも、怨霊さん運ぶの手伝ってくれよ。」
「なっ!!怨霊さんだ!・・・どうして酔っぱらってんの?・・って、それどころじゃないのよ!!変な奴がうちに来て、私たち閉じ込められちゃったのよ!!」
「ご主人さまぁー・・・申し訳ありません。この悪霊、手も足も出ませんでした。」
半泣きになりながら、悪霊も泣きついてくる。変な奴?閉じ込められた?何言ってるんだこいつらは。現に俺はいま普通にドアを開けて入れた。振り返って今入ってきたドアを確認したとき、初めて違和感に気づく。
「な・・・なんじゃこりゃ・・。」
ドアの向こうには、あるべきアパートの廊下ではなく、見慣れた自分の部屋が続いていた。それに加え、部屋全体が薄暗く肌寒い。
「ほら、だから入ってきちゃダメって言ったのに。せっかく外からどうにかしてもらおうとしたのに計画が台無しじゃない!!・・・げっ、気を付けて。アイツが原因よ・・」
「もう嫌なのです・・・ご主人さまやっつけてください!」
俺を盾にするように、後ろに隠れる幽霊と怨霊。部屋の奥から現れたのは、スーツ姿に金髪そして眼鏡をかけた男。年齢は俺より年上に見える。
「はぁー、ヌイの奴また仕事投げ出して逃げたのかよ。・・・ん~?そこで寝ている野良霊の姉ちゃんにやられたのか。・・・・ヌイが逃げ出すわけだ。こんな強い野良霊も珍しい。」
こいつ、ヌイを知っているのか。ということは、こいつも超常現象研究会の刺客か。そういえば、ヌイがこんなこと言ってったっけ。
『『ふっ、残念だったなぁ!!いまごろお前の使役してる霊共は、私の師匠が制圧しているだろう!!』』
「・・・ってことは、アンタがあのヌイって奴の師匠かよ。すみませんが、ここ俺の家なんで出て行ってもらえませんかね。」
正直、見た目怖いし話しかけるのも怖いが勇気を振り絞って一応頼んでみる。
「残念。上からお前らを連れて来るよう指令が出てんだわ。お前らを逃がすわけにはいかねーなぁ・・。まあ、この部屋は俺の『かよっち』が空間支配してるから、どうやったって脱出は不可能だけどな。」
かよっち?こいつの使役霊の名前か?
「おーい、かよっちー。出てきて挨拶しろー。」
ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"・・・・
どこからともなく、なんとも不気味な声が聞こえてくる。こんな恐ろしい声を出す奴なんて、一体どんなヤバい霊を連れてるんだこいつは。
ズズズズ・・・
戦慄した直後、男の後ろに隠れるようにして、『かよっち』なる霊が姿を現す。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"・・・・ん"っ、ゴㇹッ!!ゲㇹォ!!・・・あっ、あのっ、初めまして。かよっちです。大人しく拘束されてくださいっ!!」
現れたのは、とても恐ろしい声を出していたとは思えない、ふわふわした雰囲気の女の子だった。っていうか、あの声頑張って出してたのか。何も無理して怖さを演出しなくても・・・。




