異世界から来た青年はどうやらピエロの親殺しをお手伝いするようです。17
「さてさて、今宵の喜劇、いかがでしたか?お嬢さん。」
お嬢さん、という単語を聞いたティルは、裏オーナーに、既に男ではないことは、ばれていると直感し、ルイとしての口調は捨てた。
「楽しくないし、面白くもないね。それに言ったでしょ?嘘みたいだって。」
「それはそれは・・・私もまだまだ、ということかな。」
苦笑しながら、裏オーナーはポロリと口からその言葉を零す。そして、それを聞いたティルは裏オーナーを小馬鹿にしたように笑いながら
「そうじゃない。」
と即座に言葉を返した。
「では・・・どういうことと捉えれば良いんでしょう?」
「流石は道化師。どっちも可笑しな格好をしてると捉えてくれればいいよ。笑えないけどね。」
「フフフ。まぁ、それが道化師。可笑しな格好をしてお嬢さんを笑わせるのもいいが、笑わせぬのもまた一興、だね。」
「笑わせるのが___楽しませるのがアナタの仕事じゃなかったの?はやく、今以上の可笑しな格好でもしたら?まぁ、それにしても凄いよね。そんな変な格好をしてるだけで、何で笑われるんだか。ただ変に失敗したりしてるだけじゃん。私からみたら、ただの変人ってだけなのに。」
血が飛び散る、無機質な部屋に、ティルが言った言葉が静かに響く。
ティルはふとあたりを見渡し、何もないのを確認した。
「ただの変人、か。なかなかに酷い言われようだ。だがお嬢さんは1つ、勘違いをしているようだ。」
「勘違い?」
「そう。勘違い。しかし、お嬢さんが知る必要のない、些細な事だ。」
「そこまで言ったんだったら、最後まで教えてよ。」
「なぁに、ホントに些細な事なんだ。答えが聞きたければ、クラウンに聞くといい。最も、彼はもはやこの世界には存在しないが______」
裏オーナーは手を広げ、顔が隠れるように覆った後、その手をどける。すると、まるで、仮面でも着けたかのような笑顔がそこにはあり、だが、それはとても妖しげな雰囲気を纏っていた。そして一言。
「お嬢さんならそれも可能だろう?七大妖精総督兼全妖精抑制委員会第1皇帝有能な部族長ティル・カーベン様?」
それを聞い 瞬間、ティルは露骨に嫌そうな顔をし、裏オーナーはやはり苦手だと改めて感じていた。
「・・・・わざわざ有能までつけてくれてありがとね。やっぱり私って“有能”だから。何なら今ここでその有能さを見せつけてもいいんだけど?」
「それは止めておこう。」
ティルはあえてにっこりと口角を上げながら、嫌み混じりに言う。勿論、目は笑っていない。
「じゃあ、今はお嬢さんとして、お嬢さんの言った通り、お嬢さんを笑わせるとしようか。」
そう呟いた裏オーナーは、可笑しな格好をし、ティルを暇つぶしになのかはわからないが、笑わせようとしていた。
やはり道化師として常に振る舞っているためか、今なおティルを笑わせようとしている姿のみを見ると、根は心優しそうに見えてしまう。
つい先ほどまでオーナーとクラウンを殺していたにもかかわらず、だ。
そうなると、それすら仮面なのかと、どこからどこまでが仮面を着けているのかと、常に気を抜くことなく、疑わしく裏オーナーを見ていたティルは、当然、裏オーナーがどんな格好をしようとも、笑うことはなかった。
「やっぱり、どっちも噓っぽ過ぎて笑えない。」
「どっちも、ということは、あちらに、私の手によって殺された哀れで滑稽で軟弱な男もその可笑しな格好、とやらをしていることになる、と?」
「そうだね、してるんじゃない。」
裏オーナーは暫く言葉を発することなく、顎に手を当てブツブツと何か考え込んでいるかのように呟く。そして_________
「あぁ、なるほど。本当に、嫌な男ですねぇ。」
殺気混じりの笑みを零した。




