異世界から来た青年はどうやらピエロの親殺しをお手伝いするようです。11
「誰です?アナタ。と言っても、何となく想像はつきますが。」
クラウンは、急に現れた第3者に対する焦りを隠すためか、ニヤリと笑う。
「それでもなお、クラウン、君は私の思った通り、その男を殺してくれた。感謝するよ。」
自らの疲弊と、突如現れた敵への焦りを隠そうと無理矢理口角を上げているクラウンだが、それら全てをその敵には見透かされているようで、じわりと手が汗ばんだ。
「さて、では君ももうだいぶ疲れているようだし、私が君を楽にしてあげよう。それに、早くしなければ厄介な奴らが来そうだから_____」
「は~い、こんにちは!そこでぶっ倒れかけてる元ぎゃん可愛な僕っ子を助けに来ました、今はレイズと申します。取りあえず、『クラウンに代わってお仕置きよ』と言うことなんで、ご理解とご協力下さい。ってことで、宜しいでしゅか?」
「「「「「・・・・・。(あっ、噛んだ)」」」」」
静寂。
そして______
「何か言えよッ!!!」
レべスの新たな黒歴史の誕生である。
「あはははっ!やっぱ、レイズじゃなくてレベスだね。いいシーンかどうかは置いといて、そこで噛むところ。」
「ティル?!」
こんな時にもかかわらず、レベスは相手から目をそらし、地面に膝をつけて、ウォォォォと獣のように唸っている。端から見れば、ただの変態だ。
「クククッ、実に愉快だ。成る程、これは、君が気に入るはずだ。まるであの頃のようだからねぇ。」
「はて、何のことやら」
表情にはでていないものの、内心、クラウンは腸煮えくり返っていた。クラウンが突如現れた第三者を知っており、瞬時にそれを敵だと認識した時点で、憎むべき相手であることに違いない。
楽しかった時間を壊され、大切な人を殺されているのだ。寧ろ、ここまで冷静でいるのはクラウンだからこそ出来る芸当なのかもしれない。
「なぁ、あいつが暗躍者ってことくらいは俺でもわかるけど、結局のところ、誰なんだよ?」
「そうだね、平穏な空間を壊した相手、とでも言っておくよ。取り敢えず、騎士くん、君は手出ししないでくれ。これは僕達の問題だ。」
「俺の来た意味・・・・。」
「それに関してはきちんとあるから少々待っていてくれ。まぁ、愚か者、と聞こえたら急いで抑えつけてみるといい。それと、冒険は楽しかったかい?不思議な部屋があっただろう?」
「・・・・りょーかい。」
レベスにそう告げたクラウンは、右足を、よく見ないと気付かない程度ではあるが、引きずってその敵へ向かっていった。
「ねぇレベス」
「ん?」
「結局さ、クラウンが戦ってる間に暗躍者を見つけることだ!とか何とか言ってたけど、どうなったの?」
「それは言わないで欲しかったかなー・・・。」
レベスは頭をポリポリと掻きながら恥ずかしそうにボソッと、棒読みで言った。
「つまり失敗したってことね。」
「言うなよ?!優しさはねぇの?察してくれねぇの?!」
「甘いわね、私はレベスへの優しさは生憎持ち合わせてないの。」
「ツンデレさんなんだね。大丈夫、わかってる」
「率直な意見だよ。」
レベスとティルがぎゃあぎゃあ騒いでいると、レベスとティルの丁度顔の間を赤い薔薇___の形をした短剣が通り抜け、後ろの壁に刺さる。
「観客は静かに観ていないとね。私語禁止、ですよ。」
その行動に、こちらをみる鋭い目つきに、その笑った仮面に、レベスとティルはその場にただ唖然とし、自分達の場違いさを知った。更に、クラウンに目を向ければ、クラウンは片足を床につけながら荒い呼吸を繰り返しており、所々傷まみれだ。お世辞にも、勝てる、とは到底言えない。
「さて、では観客も此方を観てくれているようだし、そろそろ終わらせようか。」
「くっ。」
敵は狂気的な笑みを浮かべ、クラウンの心臓目掛けて一直線にナイフを投げる。
グサリ。
そのナイフは見事にクラウンに当たり、クラウンは血を吐き出す。だが、クラウンもこの程度で終わるような人間ではない。ナイフは、当たりはしたものの、クラウンの急所には当たっておらず、口から出た血を手で拭い、どこからか出したアノ仮面を被った。
「ここからが、本番、ですよ。」
その顔を見た敵は、やはり同族だ。とぼやき、満足げに笑みをこぼした。
「レベス、何かヤバくない?ってあれ?レベス?」
今までクラウンの様子を見ていたティルは、流石にこの状況では助けにいくべきだと判断し、レベスにそれを伝えようとしていたが、振り返ったとき、そこにレベスはいなかった。
※ ※ ※
「ってか、あんな台詞で俺に分かれとか、絶対無理あるだろ。俺が何も考えてなかったら、絶対わからなかった。もっとわかりやすく言えっての。何だよ『冒険は楽しかったかい?不思議な部屋があっただろう?』って。格好付けすぎだわ、コラ」
レベスはクラウンの指示通り、例の_____今までの観客の魔力を吸い取っているアノ部屋へ向かった。
※ ※ ※
レベスがいなくなったのをチラリと横目で見、確認すると目の前の敵に向けてこう言った。
「どうやらこれで、チェックメイトのようだ。」
ティルは、心なしか、風がざわついたような気がした。




