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異世界から来た青年はどうやら無双するようです。8

対戦まで残り15分前となり、レベスは、ユーズとの誓約を決めるため、フロントから何時もの個室へ行き、相手を待っていた。


「あっ、そう言えば!レベス様は、メトロの一番人気のサーカスを見に行かれたことありますか?」

「あぁ、はい」


目をキラキラさせながら、案内役はレベスに聞いた。メトロで一番人気のサーカスと言えば一つしかないので、レベスは依頼を頼まれた(受けるとは言っていない)あの場所と、全身真っ黒な男を思い浮かべた。


「どうでした?とても迫力のある演目ばかりでしたよね?特に最後の演目は驚きました。まさか、観客である私たちが参加出来るだなんて・・・・まぁ、私は選ばれたこと、一度もありませんけどね。あ、あと_____」


余程そのサーカスが好きなのか、熱弁し、ストップが効かない。レベスの返答前には次の話をし始め、どんどんと話が変わっていく。これぞまさしくマシンガントーク____いや、ガトリングトークである。

もう対戦相手が来るまではこのまま聞き流していこうかと思ったレベスだったが、案内役の「ところで、こんな噂、知っていますか?」と言う言葉の次に、興味深い話題が出てきた。


「噂、ですか?」

「はい!」


やっと言葉を挟めたレベスは、苦笑した。


「何でも、最後の演目で、お手伝いを任された観客は、皆共通していることがあるんです!!」

「共通、していることですか・・」

「はい!皆、人で、独り身なんです!!」

「何でそんな事知ってるんですか・・・・」

「企業秘密です」


案内役は、唇に人差し指をあて、微笑んだ。

ともあれ、レベスには、サーカス団の裏が見えてきたような気がした。



その噂から推測するに、人であり、更に、独り身でないといけないんだ・・・・。

独り身であることに関しては、大方、誰にも気付かれたくない事があるんだろうな。存在の有無とか。

じゃあ、人でないといけないのは何故だ?というか、攫っているとすれば何を目的に?攫われた人は今どうなってる?

あぁーわかんねえ。

まぁ、俺みたいな奴がこんなとこでグダグダ考えてても、何も浮かばねぇか・・。

て言うか案内役の人、唇エロいな。



「レベス様?どうかされましたか?」

「あ、いや、何でもないです。」


うーん、と唸っていたレベスを見、案内役はそう尋ねた。心配になったのだろう。レベス____の頭が。


カチャリ

ドアを開け入ってきたのは短い薄紫の髪を持った男。ユーズだ。

マルカの時のような威圧は感じられず、寧ろ、何も感じなさすぎて不気味なほどだ。

王者の風格、ではない。幾度となく戦場を駆け抜けた、というわけでもなさそうだ。だが、弱者ではない。寧ろ、負けを知らないようにも見える。 

そんなどっちつかずの、ほぼ何も感じられないユーズに、レベスは困惑した。


「それでは、誓約を決めましょう。」


先程とは打って変わった案内役が、静かにそう告げた。

ここから戦は始まっているのである。

 

「お前をくれ。」

「・・・・物理的に?」

「勿論だ」

「・・・・。」

「了解しました。レベス様はどうされますか?」

「いや、ちょっ、タイム。整理させて。」

「何か驚かれる事でもありましたか?」

「いや、驚くことしかないよね?!」


イケメンに真顔でそう言われたレベスは、戸惑う。新たな境地を開きそうで、戸惑う、戸惑う。

案内役も、これが普通であるかのように話を進めようとする。ある意味で、この対応は普通なのかもしれない。何せここは、何でもありの世界なのだから。現にレベスも、到底叶えられそうにない、目に見えないモノを譲り受けた。


「ユーズ様、毎度の事ながらお言葉が足りていません。レベス様が誤解なさっています。」

「・・・・俺はあいつが欲しい。駄目なのか?」


ユーズは可愛い猫のように、目を少し潤ませ、案内役を見つめる。案内役は、それに見慣れているのか、動じはしない。


「いえ、そうではなくて、言葉が足りないと______」

「欲しいのだ。」


言葉を遮ってまでそう主張し、一向に進まなくなるであろう誓約決めに、レベスはどうしていいかわからなかった。

 

「はぁ、わかりました。私がレベス様の誤解を解きましょう。」


案内役はそう言って、ユーズから顔を逸らし、それをレベスへ向けた。半ば呆れているような顔をしていた。

・・・・このような苦労もあるのか。案内役といえど、大変である。

  

「つまり、ユーズ様は、レベス様を欲しているのです!!」

「・・・・。」


得意げな顔をして言っている案内役だが、言っている事はユーズと大差ない。言い方が少しばかり変化しただけである。


「で、レベス様はどうされますか?」

「じゃあ、俺もユーズ、だっけ?下さい。」


その瞬間、空気が凍った。ユーズの時は呆れていた案内役も、レベスと同じ事を言ったユーズも固まって動かない。更に、その目はまるで、珍獣か何かを見たときのようだ。

 

「まさか、レベス様にそんなご趣味があったとは・・・・。」

「止めておけ、俺は不味いぞ。」

「何か誤解してません?」

「してなどいない。食い散らかしたいのだろう?」

「思いっ切りしてますね。わかりました!言い方を変えます!!」


レベスは、ユーズと同じ事を言った筈なのに、この対応の差は何だと、呆れ半分、切れ気味である。


「俺がいつあなたを呼んでも、俺の元に来て、助けてください。3回ほど。」


ユーズは、少し考える素振りをしたが、「いいだろう。」とあっさり了承してくれた。


「それでは誓約成立と言うことでよろしいですね?」

「はい」

「あぁ」


案内役は本を片手に唱える。


「レベス、ユーズ、その名を誓約に刻む」


本に文字が刻まれ、「【誓約を絶対とし、誓約に背くものには鉄槌を!】」とレベスも初戦の誓約決めの際に聞いた言葉を、聞いた。

そして、いつものように、魔法式が浮かび上がる。これも何時も通り、レベスのは見えず、ユーズは首に浮かび上がった。


「レベス様はレフトコーナーへ、ユーズ様はライトコーナーへどうぞ。それではお楽しみください」


案内役はそう言って軽く腰を曲げ、一礼すると、その場をヒールを鳴らしながら去っていった。


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