20、振出
俺のお姫様、リリア様へ
隣国の王子が婚姻を結んだという知らせは、こちらにも届いています。
とても喜ばしいことですね。よかったです。
貴方の心労が、また一つ消えて、とても嬉しく思います。
そして、俺たちの婚姻を認めてもらえたと聞いて、とても安心しました。
ただ、それを成し遂げるまでに何かなかったか心配です。
色々と、危険なことにはならなかったのだと信じています。
危ういことにならなかったのだと。本当に、そう思って良いですよね?
…あぁ、いけませんね。また考えすぎですね。
こうして、結婚することを認めてもらえたのならば、
今すぐにでも貴女にこちらへ来てほしいと思いますが
貴方はきっと、それを是とは思わないのでしょうね。
貴方を攫いに行ってしまわないように、気をつけます。我慢します。
ただ、俺は約束の期限以上を待つつもりはありませんからね。
その時が来たならば、迷わず貴女を迎えにいきますよ。間違いなく。絶対に。
帝国よりも、この世界に何よりも、貴方を思っています。
変わらぬ愛を。
アレクシス
追伸
私の部下が、お役に立ったならば何よりです。
貴女以外に俺心を傾けることなど何もありませんよ。
それに、彼は男です。
―――――――――――――――――――――――――
どこからつっこんだら良いのか分からないが、あの少女騎士が男性だったなんて。
確かにちょっと声が低いかなとは思ったけど、見た目が可愛すぎて全く疑わなかった。
世の中は、いろんなことがあるのだな…としみじみ思う。
そう、アレクとの再会を誓ってから、色々なことがあった。
約束の期限まで、あともう少しだけある。
私が外の世界でたくさんのことを経験できるのも、あと少し。
私がアレクに対して闘いを挑むことは、アレクにとってとても悲しいことかもしれない。
いや、とっても怒る方が大きいかな。彼にとって私は守るべき存在だから。
でも、私にも私の考えがある。
だからこそ、私は私でいられるのだから。
いつもの稽古の後、私はヒューを呼び止めた。
「ヒュー、お願いがあるんだけど… 」
「…その顔は、また面倒ごとですか? 」
嫌そうな顔で私を見つめるヒューバートに心の中でごめんねと謝りつつ、一つお願いをした。
「私の髪を、切ってほしいの 」
その言葉に、ヒューバートは固まる。
女性にとっての髪とはとても大切ものだ。私ですら騎士をしながらも髪を切ることはしなかった。
でも、今ここからが私の本当の闘いになるのだろう。だから、その決意をこめて。
「私、守ってもらうだけのお姫様なんて、やっぱり嫌なの!! だから、 」
何が何でも私は、私の願いを通すために!
「…髪が短ければ、少なくとも結婚式はあげられませんもんね…でも、あの方のことだから案外 」
「だめ! それ言うと元も子のないから! 大丈夫、少し話し合う時間が欲しいだけなの 」
あと、ついでに決闘とかする時間も、欲しいなーなんて!
ねぇ、アレク
貴方が私に騎士の忠誠を誓うのならば
それと同じだけの忠誠を私は貴方に誓いたいの。
ジャキンと最後の一房が切り落とされて、私は顔を上げヒューバートの方へ向いた。
「いよいよ僕は、帝国騎士団に命を狙われるかもしれませんね 」
「あら、大丈夫よ。 私がそんなことさせないわ! だから、今まで以上に特訓お願いね 」
サラリ、と肩で揺れる髪が軽くて、私は思わず笑みがこぼれる。なんだかとても軽やかだわ!
「…貴方の、その笑顔を一番に見れたから、もう思い残すことはありませんよ。
では、明日からもっと厳しい訓練にしましょう。完膚なきまでにアレクシス様を倒してください」
「まかせて!!!」
そんなこんなで、私は帝国への帰還に向けて己の決意を固めたのだった。
そして、物語は振出へと…
大変遅くなりました。申し訳ありません。やっと振出に戻れます。
もう、見てくださる方はいないかもしれないけど、ずっと心残りだった連載終えられます。
ありがとうございました!!




