↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/60

千年王国

 法華宗と、叡山の兵力の衝突、そこにどういうわけか、六角定頼も乗り合わせている。・・この男、目立ちすぎではないか?

 六角氏は、定頼嫡子義賢、法号承禎(ジョウテイ)が有名だ。それも、織田信長の上洛に協力するよう要請され、これを峻拒、結果、あっさりと敗北したという不名誉な知名度だ。

 六角承禎もさして有名とはいえない。ーーその父親の定頼が、ここまで、天下の重鎮として振る舞っているとは。

 中央情勢に抜きがたく関わっている。個人の才覚か、蒲生対い鶴御所の背景あってのことか。

 天文法華の乱に参加した叡山兵は十五万、六万、三万と、記述がまちまちだ。三万という数字には、現実味がある。六角定頼は、これも三万の兵を出した。この動員力は、相当なものだ。戦国大名の動員力は、一万石で二百五十人を一つの指標とする。定頼には、百万石以上の動員力があったことになる。後の浅井氏討伐にも二万五千人が動員されたという。この数字は半分以上は本当かもしれない。

 そもそも、近江という交通の要所だ。そこで、この男は、他の戦国大名に先駆けて、楽市楽座を施行し、同業組合(ギルド)であった「座」を廃止した。この既得権益団体がなくなったことで、自由参入が進み、商業が振興される。江戸時代に名を上げた近江商人は、そもそも近江に渡来人の入植が進んでいたことから、彼らが故国の形態を持ち込んだのではないか、と、司馬遼太郎が書いている。それとは別に、六角定頼が採った楽市楽座が発祥だという説もある。それだけ、栄えていたのだろう。座の背景には、その威光を寺社が担った、ナニナニ天神の威名に基づき、この商品の販売権はこの座が独占している、という体裁にしていた。対宗教勢力作戦に定頼が参加するのは、この楽座方針と合致している。

 ーー織田信長の先駆のような男だ。

 この男も、表に出ないだけで、結構な没義道だ。ともに一向宗と戦った法華宗の撃滅作戦に参加している。

 さらに、叡山陣営には、三井寺も三千人出した。平安時代で言うところの「お山」「お寺」が手を結んだ。

 これに対する法華宗は、京都二十一箇所寺から、二万余を捻出した。三万とも言うが、どちらにしても、劣勢だった。

 天文五年(一五三六)七月二十日頃、延暦寺は、数万の僧兵を比叡山東山の山麓に配した。京都の東口は、これで塞がれる。六角定頼、さらには義賢(満十五歳)、さらに蒲生定秀ら近江勢も、東山に布陣した。

 北方には、三井寺の僧兵三千がつき、北口を遮断する。

 京都の宿命的な脆弱性として、この高所からの兵団を引き受けなくてはならない。法華宗は、五月下旬から、洛中の要害に溝を掘り、延暦寺の攻撃に備えていた。

 七月二十二日、叡山西麓「松ヶ崎」で両軍が衝突した。この戦いが二十七日まで継続しているから、法華宗も意気盛んで、散発的に軍勢が行き交う合戦が持たれたのだろう。

 四頭身以下、歪に巨大な牛頭持つ四つ目六臂の魔王も、身を乗り出してしまう。

 八幡大菩薩もだ。

 (この業だ)

 身命を賭した軍(いくさ)と、生涯を掛けた信仰と。

 それらが、宿命的に交錯する。ーー宗教戦争にしかない「聖(ナル、0)」が、立ち現れる。

 欲得、俗世の都合、それらも無論ある。そうでないものも。

 人が神々を脅かす瞬間だ。

 (これが、お主にとっても、特別な一戦であることを望むよ

 (明立(あきらかにたつ)天之御影命)

 六角・蒲生勢の後背に、イスパニアの天軍もかくや、という後光が烈々と噴き出し、その光輝にも冒せぬ巨大な影の滲みが佇立している。

 後光(ニンバス)を負った、近江勢が動いた。

 七月二十七日、六角軍が四条口「松ヶ崎」よりも五㎞ほど南方から突入、放火しながら、法華宗二十一箇所寺を巡り、本圀寺(ホンコクジ、山科区御陵大岩)を除いてすべて焼け落ちた。

 法華宗は、炎と煙の中、本圀寺に結集したが、ここも打ち込まれ、翌日午前中には陥落した。

 法華宗が出した死者は千~一万人、延暦寺と六角勢の放火で、応仁の乱以上の大火が生じ、下京の全域、さらに上京の三分の一が焼失した。

 神の国の光と、永遠の影を負った軍団が、京を焼く。

 

 法華宗は、叡山と、蒲生対い鶴御所に敗れた。ーー天文法難である。

 


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。