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朽木御所~一合~

 「於東寺決其勝負之処、和睦之儀出来、仍不能合戦」本来なら、髙国は東寺で決戦に踏み切るはずが、六角定頼が横から和平を申し出たがために、それができなくなった。幕府軍の勝利を邪魔立てしたのは、定頼だった。

 ここに、畿内ミステリーと、その補助線となる京極髙清─浅井亮政─馨庵(ケイアン、尼子娘)の伏在を、それを補強する

 『[山名誠豊を裏切った垣屋氏は義稙に面会し、主家と同格の直参身分を認められている。但馬に攻め込んだ山名豊治は、妹が唯一の義稙側室。北畠晴具を牽制した長野通藤は、嫡子が義稙の偏諱を授かっている。六角氏も義澄から寝返った義稙陣営であり、旧義稙派が四国勢の外交戦の基軸だった可能性は高い]』

 桂川合戦ミステリーの伏線、それらが意味する京極尼子氏を先頭にした西国勢の同盟と圧力を、読み取れてしまうのだ。

 なぜ、一介の近江守護であり従四位下でしかない定頼が、幕府軍の大きな進退に意見できるかといえば、それこそ、御所様・六角義実の存在を挿入せねば話が通らず、そもそも六角義実などを持ち出すのならこの説はここまでだ、と、放擲することもできないのだ。 ミステリーだらけの戦国畿内情勢に「解答」が出せるかどうかだ。その瀬戸際だ。

 

 さて、櫛の歯が欠けるように、主要武将が、退京する。その中で、義晴の身辺を警固していたのは、下笠氏や後藤氏といった六角家被官であり、この点、義実のWikipedia項にあったとおりである。

 『その治世中、一貫して足利将軍家の庇護者として行動し、京を追われた足利義晴を領国近江に保護し、大永6年(1526年)には浅井亮政退治を青木社に祈願するなどの行動が見える。』

さて、京で粘っていた定頼と義晴も、五月二十八日に退京、六角軍とともに近江へ退く。

 『今日六角軍兵一万餘云々、雨中美麗驚見物之目云々』鷲尾隆康は、この日、雨の京を去る六角軍の様子を記している。「雨中美麗驚見物之目」彼らの軍装の美々しさは、六角氏の経済力の現れだ。定頼は日本初の楽市楽座を施行するが、それはまだまだ後のことである。

 隆康は、手厳しい。

 『雖然今度儀少弼一身所行之故(だが、今度の儀は六角定頼の身から出た錆である)

 『不被開御運、也不可説之事也、美麗無其詮者乎(御運開かれず、これは他に原因はない、美麗であろうとそれがなんだろう)』

 (収穫はあった)

 定頼は、そうおのれを慰めるしかない。少なくとも、四国勢は、義晴を「崇敬」する旨、この件に関して好感触を得た。

 しかしながら、息切れするような媒酌人たちの苦労は、まだまだつづく。(ーーこれは、公方を意中の人に縁付かせようとすれば、おのれは、意外の人物と縁付く他ないか・・ーー)

 六角定頼は、細川晴元と縁組みする件、覚悟を決めている。

 

 大永八年(一五二八)九月、義晴は近江朽木の地へ移る。この地の領主・朽木氏は幕府奉公衆ながら、佐々木源氏支流であり、依然、六角家と将軍家はつながっている。義晴は朽木で二年半執務する。彼の周囲には奉公衆・奉行衆・昵懇公家衆・外様衆・申次衆と、室町幕府を構成する主要人員が集まっている。こうして、幕府の体裁を保ちつつ、朽木の地にあること事態が、堺幕府への巨大な圧迫だった。

 もっとも、堺幕府も朽木へ寝返り工作を仕掛け、結果、享禄二年(一五二九)に十七人の公家衆が朽木を去っている。

 それでも依然、オーソリティーは義晴だ。義晴は、朽木御所で、相変わらず、六角氏と浅井氏の和睦に手を尽くした。これは、小状況としては、六角氏と京極氏─浅井氏の対立だが、浅井氏─尼子氏─旧義稙派という大状況がある。

 京を退いた後も、政局の坩堝で、だから、この和睦はなかなかまとまらない。

 この間の諸大名の同盟者は、朝倉孝景であり、若狭の武田元光であり、先の桂川合戦で与力した但馬の山名誠豊(のぶとよ)だった。対い鶴御所の面々である。武田元光は妻が晴元妹であり、調略の焦点にあったと思われるが、義晴支持で貫いた。

 享禄四年(一五三一)正月末、浅井亮政が、晴元と結んで、朽木庄のある高島郡を襲撃。

 (来たか)

 二月一日から、十七日にかけて、義晴は葛川─堅田─坂本、と、移動した。この間に、定頼が兵をまとめて、米原市箕浦にて、浅井軍を破っている。

 この何気ない進退も、巨人たちのつばぜり合いだったことが分かる。

 


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