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九代の絶縁状

 この九条家と近衛家の対立、ひょうすべ史観にも大きなウェイトを占めている。

 九条稙通の後任関白が二条尹房になった。

 そもそも、五摂家は、一条、二条、九条、近衛、鷹司だ。

 この内、九条兼実子孫から、さらに二条義実(よしざね)一条実経(さねつね)が出る。それぞれ、一条氏と二条氏の祖だ。

 つまり、一条家二条家は九条家庶流なのだ。

 同じように、鷹司家は、近衛家から出た。つまり、五摂家というものの

 九条流(九条家、一条家、二条家)

 近衛流(近衛家、鷹司家)

 この二大派閥に分かれている。ーー九条稙通の放浪は、義晴入京に起因し、同情されたのだろう。後任が同じ九条流だ。しかしである、天文五年(一五三六)関白二条尹房も辞任して、近衛稙家が再任されているのだ!!

 もともと二条尹房は、後奈良天皇即位式(一五三六年二月二十六日)の際に「印明伝授」二条家が行う秘儀のために選ばれたのだともいう。それにしても、その後、近衛稙家が再任されている点、義晴の働きかけがあったとしか思えない。この後、稙家は太政大臣に就任(一五三七)さらに彼の後も鷹司氏が関白となり、十年もの間、近衛流が関白を独占する。

 将軍家に縁付くメリットはこれだけある!! 朝廷に働きかけ、関白の座に関する係争ですら、便宜を図ってもらえる。

 当時の室町幕府と朝廷の関係は、あるいは、日本国政府と皇室の関係にまでスライドして来たのではないだろうか。

 大日本帝国でさえ、天皇陛下ご自身の裁断「聖断」は二回。ポツダム宣言受諾、終戦の勅書に関するものだ。

 他は、政府(幕府)の裁量が大きいのだ。だからこそ、朝廷も、幕府の権威裏付けとして、巨大な存在感を発揮していたのだろうが。

 こうして、九条稙通は西日本を放浪、その過程で、義晴─義輝とつづく将軍・近衛家体制に対抗すべく、三好政権や本願寺と接近、十河一永に娘を嫁がせ、本願寺顕如を猶子とした。

 親幕府セクトの「親分」がこれだけ動き回っているのだ。同セクトの尖兵である日野家も、なんとか武家政権と不即不離の関係に戻るべく、尽力する。だから、思わぬことに、巨大な調停者だった、六角定頼の死を契機に、義輝が日野家に接近する動きに出ると、狂躁を示した。

 (公方自らが、息長流の家督相続を後援した!!公方は、わしらの味方じゃ!!)

 

 だが、義輝は、近衛家娘と結婚した。

 

 敗れたのだ。

 『(どうだっていいのだ)

 秦氏など。

 

 中央から地方の闇に消え入った牛の消息など。

 

 存亡など。

 

 だれひとり気にかけやしない!!

 

 (ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー~~~~~~~~~~~~~ツツ!?)

 

 源氏(みなもと)。

 籐氏(ふじわら)。

 

 (おのれらああああああああああああアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーツツあああああああああああああーーーーーーーーーーーー!?)』

 安和の変で秀郷流が噛んだ、苦難の砂だ。ーー家柄でも、権威でもない、その実力でのし上がってきたセクトは

 必要でなくなれば、切られるのだ。

 この中央の光明のただ中でさえ!!

 (あああああああああああああああああああああああああああーーーーーーー!?)

 だから、敢然と反旗とひるがえしたのだ。(最早公方は、足利将軍家は、われらの味方たり得ぬ!!ーー九代に渡る縁故も、永代には届かなんだな!!)

 改元を報せず「永禄」年間に孤島のように「弘治」に取り残される姿を見てほくそ笑み

 本来幕府が裁決すべき皇室の仏事を、三好政権に委ね

 おのれの一族の娘さえ、三好政権の柱石・松永久秀にくれてやった。

 お前たちは、不愉快だ。

 室町幕府の闇将軍は、征夷大将軍へ、三行半を叩きつけたのだ。

 

 


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