一族会議
九月十八日、堺に三好一族が集まり、向後を協議する。
「ーーまあ、どうなるにせよ、これで、出し惜しみしたと後悔することだけはのうなった」一族の長老、長逸は苦笑する。「米櫃を空にする傾けようよ。伸るか反るか」
「義賢承禎との交渉はつづいておるのだろう?」実休が、長慶を見る。「ならば、潮時であろう。公方と和を結べ。これなら事実上承禎殿が仲介よ。悪いことにはなるまい」
長慶は、不快げに目を細めた。
「ーー兄者!! 一か八かの賭けをする必要があるか!? 十中八九までは、対等以上の条件で和睦できる!!」
(これ以上何を求めているのだ!!)すでに三好家は、隠れもない畿内の覇者だ。ここで将軍を戴けば、さらに盤石の体制で天下に臨むことができる。
将軍を擁した上での堂々たる天下取り・・父元長が望んでいた以上の覇望が、すぐ目の前に開けているではないか!!
「ここは公方と承禎殿の顔を立てよ。すでに公方は一度、晴元の出家を認められておる。今度こそ、あやつを追い払うことができようぞ」
実休は、安宅冬康を見た。
「神太郎(安宅冬康)お主のかんがえは、どうじゃ」
この、寛仁で衆望を集める三男は、意外なことに固い顔で腕組みしている。
「ーーわしには、判断が付きかねる。日々、瀬戸の海道が毛利家の軍船に脅かされ、往来が不自由になっておる。それは確かじゃ」ため息を吐く。「だが、ことは、陸の上の波乱よ。阿波のことなら実休兄に、畿内のことなら長慶兄に丸投げじゃ。和戦いずれとも、わしは決することはできぬ。ーーじゃが、寄せるにせよ、引くにせよ、畿内であれ四国であれ、中国九州でも、淡路衆は必ず荷も兵ももたらしてみせる。それだけじゃ」
(うぬぬぬぬぬうううううううううーーーーーー!!)
神五郎は、和議に投じなかった。(孫六郎〈十河一存〉ーーーーーー!?)
四天王随一の荒武者である、末弟を見る。
長慶も、床の間に置いた、ひどく禍々しい雰囲気の像のような趣で、孫六郎を見つめている。
「ーー長慶兄」
末弟は、言った。
「和睦しよう」




