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上誅下

 (よし、動かん)室町幕府の左京亮排除の動きを受けて、遊佐長教は、本格的に始動する。晴元と連絡し、両者で、幕府に御内書を送るよう求める。相手は、紀伊に追放されていた畠山稙長、かつての尾州家代表だ。この頃、尾州家は細川家縁者であり、傀儡の性格が強い畠山晴満が代表だった。晴元と長教は、稙長に対し、晴満を追う御内書を出すよう要請する。晴元は、木沢左京亮ごと、畠山晴満も切り離すつもりだったのだろう。さらには、二人は本願寺証如にも、局外者でいるよう求める書簡を送っている。

 (言われなくとも、だ)天文の錯乱で、宗徒は暴走し、おのれは下間頼盛に誘拐された証如だ。門徒の抑制に回っている。九条家猶子で栄達するためには、畿内で無闇と騒ぎを起こすのはよくない。

 ここで晴元は、天文十年(一五四一)十二月八日、兵を挙げた。京都北郊岩倉から、摂津芥川山城(大阪府高槻市)に入城、ここに三好軍を集める。

 「出たな孫次郎(長慶)殿」長教の心は躍ったろう。

 左京亮軍も、笠置城から出て、山城井出(京都府綴喜(つづき)郡井出町)に布陣した。

 細川・三好軍の芥川山城は、北摂にある。山城井出とは、二十㎞ほどだろうか。対応しているものの、木沢軍の動きは鈍い。

 両軍は、木津川と淀川を挟んで対陣。そのまま越年する。

 一方で、遊佐長教も、紀伊の国人衆から、根来寺、高野寺、粉河寺(こがわ寺、紀伊の巨刹)の僧兵を動員

 天文十一年(一五四二)三月八日、総州家の重臣であり、左京亮の婿である斉藤山城守父子を暗殺。左京亮攻撃の姿勢を明らかにしつつ、畠山稙長を迎えた。さらに翌九日、幕府は木沢左京亮に続き畠山晴満を「御敵」に指定、十日、晴満は左京亮方の信貴山城へ逃れている

 細川・三好軍と睨み合っていた木沢軍は、これを受けて移動、二上山城(大和と摂津国境)へ入城する。畠山稙長が入った高屋城を、信貴山城と南北で挟撃できる位置だった。晴元も、三好軍を南下させる。

 

 三月十七日、畠山稙長の籠もる高屋城の先発隊と、左京亮の二上山城の斥候隊が交戦する。

 旗色が悪い、とみた左京亮は、守兵三千を残し、七千の兵を前線へ投入。斥候隊と援兵は、一旦北上してから高屋城の兵と交戦した。ここで北上したのは、信貴山城の畠山晴満の援軍を期待しての行動だという。

 どこか、謀略家の下心というか、下剋上根性というか・・ーー

 午後三時から始まった戦いは、一時間ほど経過すると、新たな兵団の到着を迎える。

 「来たか、弥九郎(晴満)!!」

 

 だがそれは、南下した三好軍だった。

 さすがに偶然だと思うが、一方でタイミングが良すぎるとも感じられる。計算した上で兵を入れたのだとしたら、之長以来、完璧な人心把握だ。

 

 三好軍を側面に受けて、木沢軍の士気は崩壊した。崩れゆく自軍へ、左京亮は、飯盛山城へ退却するよう命じる。

 (ううううううううううう~~~~~~~~~~~~~~~~!?)

 

 か(・)つ(・)て(・)元(・)長(・)に(・)追(・)い(・)詰(・)め(・)ら(・)れ(・)、(・)包(・)囲(・)を(・)受(・)け(・)た(・)城(・)で(・)あ(・)る(・)。

 飯盛山城には、総州家代表・畠山在氏がいる。その庇護を求めたのだと言うが

 

 なにやら、因果が巡っている。

 

 あのときは、一向宗の大軍が、元長軍を潰走させた。

 おれはその、元長の伜の軍団に、敗走している!!

 

 「小僧がああああああああああああーーーーーーーーーー!!」

 

 飯盛山城にたどり着くことなく、大阪府太平寺のあたりで、左京亮は、討ち取られた。

 もともとは、摂津越水上の長慶が、塩川国満を攻めて、国満が左京亮に援軍を求めたところから始まっている。

 

 下剋上の権化は、かつて、おのれが踏み台にした男の息子に、長慶が作り出した状況に、滅ぼされた。

 

 

 


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