第7話 「漁業のバイトで来たんですけど」
今度は別のドアだった。
見張りが違うドアを指差した。こっちは個室らしかった。ノックした。返事がなかった。開けた。
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薄暗かった。小さい丸窓がひとつ。空気がこもっている。
テーブルの端に、男が座っていた。三十代くらい。痩せている。疲れた顔をしている。
日本人…に見える…ような?
「あの」
男が顔を上げた。
「……日本人ですか」
「……え」男は俺を見た。俺も見つめ返した。あんまり男同士で見つめ合う趣味はないんだが。
「あなた…日本人…?あなた、なんで、ここに……」
「えっと、漁業のバイトで来たんですけど」と俺は言った。
男が黙った。
長い沈黙があった。
「……は?」
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名前は小山正則、と言った。コウカイシらしかった。
「それは漁業ではないです」とマサノリは言った。落ち着いた声だった。でもちょっと震えていた。
「わかってます」と俺は言った。「ナイルパーチも捕ってないし」
「は?」
マサノリはナイルパーチを知らないらしい。
「ナイルパーチっていうのは、日本でも回転ずしでスズキとして回ってて……」
「そうじゃなくて!」
マサノリが額に手を当てた。
「……なんで今まで気づかなかったんですか」
「なんとなく、なんとかなってたんで」と俺は言った。
また沈黙があった。
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マサノリは真面目な人だった。話してみるとすぐわかった。
「状況を整理させてください」と言って、メモしようとした。でも紙がなかった。
「メモ帳ありますか」と聞かれた。スケッチブックの余白を破って渡した。
「ありがとうございます」
正しい人だ。
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「状況を整理しました」とマサノリが言った。
「この船は貨物船です。海賊に遭って立ち往生しているところです。そして、あなたは海賊の仕事をしています」
「……あ」
そういうことか。
「じゃあ、さっきの部屋の人たちも」
「人質です。私もそうです」
考えた。
もう、日本には帰れないかも。あー。びっくり。




