第3話 「これ、漁業じゃなくない?」
ナイロビ空港に降り立つと、熱気が押し寄せてきた。
ねっとりとした重たい空気。土のにおい。排気ガス。喧騒。日本と全然ちがう。空が、なんか広い。
ケニア。調べたところだ。
「タクさん?アリといいます」
担当者が迎えに来ると言っていた。その人がアリさんらしかった。
「さぁ、次の便でボサソへ行きますよ」
「ボサソ?ナイルパーチってボサソで釣れるんですか?」
アリさんは首をかしげた。そして「さあ、急ぎましょう」と言って歩き出した。
どうやら俺のセリフは無視することにしたらしい。おい。
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次の飛行機は、小型のプロペラ機だった。
席は十二個くらいしかない。ガタガタ揺れる。隣に座っている男が、なんかすごく怖い顔をしていた。向かいの男も、負けず劣らず怖い顔をしていた。全員そうだった。
今さら降りられない。
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ボサソの空港に降り立つと、空気が変わった。
今度は乾いた熱気だった。日差しが強くて、目を細めた。どこかから、ニュースで聞いたことある感じの祈りの歌が流れてきた。見上げたら、モスクの白い尖塔が見えた。こぢんまりした町だった。
あ、だいぶ遠くに来た。
車に乗せられた。アリさんはほとんど喋らなかった。窓の外に民家が減っていき、舗装が消え、何もない土と石の道になった。
「なんか思ってたのと、ちがう」
声に出てしまった。アリさんは無反応だった。
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港に着くと、男たちが何人かいた。
銃を持っていた。本物の銃だった。マンガで見たやつと同じ形をしている。AKってやつだ。
足が動かなくなった。
銃口で、船を指された。
何かを言おうとした。でも何を言えばいいんだ?金魚みたいに口をパクパク開けて、結局何も言えなかった。
船に、乗れってことだよな。乗った。
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出港した。
港が遠くなっていく。だんだん小さくなる。
戻れないかもしれない、と思った。
しばらく、波を見ていた。
まあ、なんとかなるか。
……なるよな?




