第2話 「回転ずしのあれか」
送信して三十秒後に、メールが来た。
早い。
「お問い合わせありがとうございます!ご都合の良い日をお知らせください!!」
絵文字つきだった。返信してしまった。断れなかった。
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待ち合わせは渋谷のファミレスだった。
現れたのは、恰幅のいいアフリカ系の男だった。スーツ。にこにこしてる。怖くない。むしろ感じがいい。
「ムハンマドといいます、よろしく!」
「タクヤです。タクって呼んでください」
「タクさん!よろしく!」
よし。いい感じだ。
席に座ったら店員さんが来たので、「何か頼んでいいっすか?腹減ってて」と聞いた。ムハンマドさんが「どうぞ」と言ったので、ドリンクバーとハンバーグランチとデザートのパンケーキを頼んだ。
ムハンマドさんが、ちょっと冷たい目で見てきた。
やべ、やりすぎたか。
「仕事の内容なんですが」と、ムハンマドさんは気を取り直すように言った。「漁業の補助スタッフとして、アフリカの沿岸で働いてもらいます。船上の作業全般ですね」
「月収六十万って、なんでそんなに儲かるんですか?」
「現地は人手不足がひどくて。あと、危険地手当みたいなものも込みですね」
危険地手当。
「危険って、まさか傭兵とか……?」
「いやいや、無理ですよ。素人が傭兵なんて、マンガじゃないんですから。全然そんなんじゃないです」ムハンマドさんは手を振った。「危険って言っても、戦ったりするわけじゃないんで。海が荒れるとか、その程度ですよ」
まあ、そりゃそうか。
「実は借金があって。四百八十万なんですけど、利息とかもあるから、六百万くらいためて帰りたいんですけど、一年くらいでいけますか?」
「一年いれば、まあそのくらいはたまりますよ」ムハンマドさんはにこにこしたまま言った。「嫌になったらいつでも帰ってこれますし」
ほんとかな。
紙を渡された。
条件:月収最低60万円保証。最大80万。渡航費全額支給。衣食住完備。現地で前払い五万円。パスポートが必要。
ムハンマドさんが封筒を出した。「チケットです。来週出発です。現地では担当者が迎えに来ます」
「わかりました」
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出発まで一週間あった。
一応、調べてみた。チケットを見ると、行き先は「NAIROBI」と書いてあった。ナイロビ?どこだ?調べたらケニアだった。
「ケニア 漁業」と入力した。
ナイルパーチという魚が出てきた。東アフリカに生息する淡水魚で、日本ではスズキとして売られているらしい。
あー、回転ずしのあれか。あれを捕るのか。なるほど。
画像もみてみる。でかい。かなりでかい。これは危険かもなぁ。気を付けよう。
ブラウザを閉じた。荷物くらいは準備しようと思ったけど、気づいたら前日になっていた。
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成田空港。
荷物はリュック一つ。夏服と着替えとスケッチブックと鉛筆。カメラは持ってこなかった。なんか、写真より絵の方が好きだから。これくらいあれば、なんとかなる。
搭乗ゲートをくぐりながら、ふと思った。
ナイルパーチ、釣れるかな。




