第12話 「スパゲッティ、手で食うのか」
連れてこられた。ハッサンの知り合いの家らしかった。
玄関に靴が山積みになっていた。洪水で押し流されたみたいに積み重なっている。誰も並べていなかった。みんな気にしていなかった。
俺も脱いで、その山に加えた。
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部屋に入ると、男が何人かいた。知っている顔もある。全員がわーっと声をかけてきた。
ハッサンが俺の肩を叩きながら何か言っていた。紹介しているらしかった。
「タク!」とハッサンが言った。
なんか俺が言うみたいな空気になった。
「ヘイ!アイム、タク。ナイストゥーミーチュー」
何人かが笑った。お、結構伝わるじゃん。
やっぱ言葉じゃなく、心だな。うん。
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大きな皿が来た。
ヤギの骨付き肉。スパゲッティ。丸くて平たいパン。全部まとめて出てきた。
みんな手で食べていた。スパゲッティも手で食べていた。
スパゲッティ、手で食うのか。
試してみた。まとまらない。全然まとまらない。
誰かが笑った。
食べてみた。うまい。びっくりするほどうまい。スパイスとかじゃなくて、なんか素直にうまい。日本のやつに近い感じがした。
食べながら、なんか描きたいな、と思った。リュックを探った。ない。
あ、マサノリにあげたんだった。
ちゃんと使ってくれてるかな。
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食後、ハッサンが木の枝みたいなものを取り出して、端を噛み始めた。
「なんすかそれ」
ハッサンが俺に差し出してきた。
端を折って、見よう見まねで噛んでみた。繊維がほどけて、歯の隙間に入ってくる。さわやかな苦みがあった。
歯磨きか。なるほど。これは気持ちいいな。
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片付けが終わったころ、ハッサンが立ち上がって出ていった。しばらくして、戻ってきた。後ろに誰かがいた。
女の人だった。
ハッサンが俺を指差して何か言った。次に女の人を指差して「アミナ」と言った。
妹、らしかった。
細身で背が高い。目鼻立ちがはっきりしている。
きれいな人だな、と思った。船に乗ってからずっと男しかいなかったせいかもしれないけど。
「ハロー」と俺は言った。
アミナが俺を見た。それからハッサンを見て、何か言った。速かった。ハッサンが苦笑いした。
アミナがもう一度、ゆっくり言い直した。
「チャイナ?」
「ノー。ジャパン」
アミナが頷いた。それからハッサンに何か言って、また俺を見た。
「ウェルカム」
アミナがニコッと笑った。
なんか、ちゃんとした人だな。それだけじゃなくて、笑うと可愛いな。
もっと話してみたいけど、言葉がない。
これは、語学勉強フラグが立ったな。立ったのか?




