第11話 「ジャッキー・チェン!」
ボートが砂浜に乗り上げた。
ハッサンが「エイル」と言った。ここが、あの「エイル」か。
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エイル。船の上で、ハッサンが何か言っていた気がした。よく聞き取れなかったけど、得意げな感じだった。「オールド」とか「ファースト」とか「パイレーツ」とか、そういう単語が混じっていた。
「パイレーツ」はわかるぞ。パイレーツ・オブ・カリビアンだろ。
ってことは、きっと、最古の海賊の街ってことだ。なんかドクロマークとか掲げてそうな感じを想像していた。
思ったより普通の漁村だった。
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砂浜で、アブディが封筒を配っていた。
受け取った。開けた。ドル札が入っていた。
数えた。六千ドル。
えーと、一ドル百円として……六十万円くらいか。
渋谷のファミレスで、ムハンマドさん、最低六十万って言ってたもんな。
ほんとにもらえた。すごい。
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砂浜を上がると、じりじりと熱かった。砂が靴の中に入った。太陽がまっすぐ刺さってくる感じだった。
白っぽい建物が並んでいた。平屋が多い。道は舗装されていない。砂と土。干してある網。魚の匂い。
なんか、どっかで見たことある感じの光景だ。静岡だったか三重だったか、どっかの漁村でこんな雰囲気の町を通ったことがある気がする。
ちがうのは、歩いてる人が銃を持っているくらいだった。
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おじさんが銃を肩にかけながら、野菜を買っていた。
普通に買い物しているな。
ヤギが道を横切った。誰も気にしていなかった。
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ハッサンが誰かに声をかけた。男が振り返って、ぱっと顔を輝かせた。抱き合って、肩を叩き合っていた。知り合いらしかった。立ち話が始まった。
俺はその横に立っていた。
子供が三人、じわじわ近づいてきた。じっと見てくる。
「チャイナ!」
違うけど。
「ジャッキー・チェン!」
ジャッキー・チェンはそんなに見た目が特徴的じゃないと思うんだけど。みんなジャッキー・チェンなのか。
まあ、せっかくだし。
「ホアッ!」
カンフーのポーズをとってみた。
子供たちが爆笑した。俺も笑った。
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携帯を向けてみた。
全員、顔をそむけた。
そうか、だめか。
スケッチブックを出して、顔を描いた。渡したら、取り合いになった。
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「ここ、住んでる人もいるんだ」と俺は言った。
ハッサンがわからないという顔をした。当たり前か、日本語だった。
でもまあ、住んでいるのは見ればわかった。洗濯物が干してある。子供が走っている。誰かが窓から外を見ていた。色鮮やかな布をまとった女の人たちが、こちらを見てくすくす笑っていた。
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海賊の町って、なんか思ってたのとちがうな。
もっとこう、やばい感じかと思ってた。
ヤギがまた横切った。猫が日陰で寝ていた。誰かが撫でていた。




