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ハニーオレンジとアメジスト ――運命が動き出す街で  作者: じゅんき


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18/24

第十五話 ――朝の鑑定室――

閲覧室の扉を開けた瞬間、

ギルドの空気がいつもより落ち着かないのがわかった。


「何かあったんですか?」


受付のアリサに声をかけると、

彼女は慌てたように答えた。


「21階層のパーティーが、大量の素材を持ち込んできたんです!

鑑定が追いつかなくて……」


そこへ──


「なんだリンク……いたのか」


ヨゼフが、ぶっきらぼうに頭を掻きながら現れた。

眠そうな目で、肩をぐるぐる回している。


「ちょうどいい。俺の代わりに鑑定してくれ」


そう言うなり、踵を返して手をひらひら振りながら

ギルドの外へ出ていく。


(……またかよ)


リンクはため息をついて、

うらめしそうにヨゼフの背中を見つめた。


その横で、職員がリンクを手招きする。


「じゃ、行こうぜ!」


ローランドが当然のようにリンクの肩に手を回した。


「部外者だろ……」


「いいじゃんよ、見てるだけだからさ」


リンクからぱっと手を離して、

嬉しそうに前へ出た。



鑑定室に入ると──

湿った土の匂いが鼻をかすめた。

魔石の微かな光が、積み上がった素材の影を揺らしている。


そのあいだを職員たちが忙しなく行き交い、

鑑定士たちのピリピリした声が飛び交っていた。


魔石。

鉱石。

未知の植物。

魔物の部位。


(……多すぎだろ)


リンクは顔を顰めながらも、

しぶしぶ作業に取りかかり、慣れた動きで次々と鑑定を進めていく。


その速度は異常だった。


周囲の鑑定士たちがざわめき始める。


「おい、あの子供……早すぎないか?」

「適当に書いてんじゃねぇだろうな?」

「ギルドの素材だぞ、責任取れんのか?」


ローランドは野次った方へちらりと目を向け、

満面の笑みで腕を組んだ。


「リン、すげぇ~! 速すぎて目が追いつかねぇ!」


外野の声をかき消すように、

わざと大げさにはしゃぎだす。


「黙ってろよ……集中できない」


リンクは呆れたように言いながらも、

その“騒がしさ”に救われている自分に気づいていた。


そこへギルドスタッフが近づき、

眉をひそめた。


「君、鑑定士の証明を見せてもらえる?」


(……めんどくせぇ)


リンクはしぶしぶカードを取り出した。


そこに刻まれた文字。


──国家鑑定士1級。


室内が静まり返る。


「……嘘だろ」

「なんでこんな若造が……」

「本物……なのか……?」


ローランドはニヤリと笑い、

一歩前に出た。


「お~い、さっきリンに文句言ったやつ、前に出ろ。

お仕置きしてやる!」


「やめろ!! ややこしくなるから!!」


リンクの叫びが、

鑑定室に響き渡った。


ローランドは肩をすくめ、

“ちぇ~”と子どものように口を尖らせる。


リンクは小さく息を吐き、

胸の奥がほんの少しだけ温かくなるのを感じていた。


(……なんなんだよ、ほんとに)


その温度が、

復讐の炎とは違う場所で

静かに灯っていた。



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